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Prologue ページ1

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つくづく、思う。

大学ってやつは、片思いに優しくない。



時刻は8時50分。
週始めの1限目は教室が埋まらない。



「…………ねむ」



こういう時の10分ほど長いものはない。
机につっぷして目を閉じる。


早く隣のヤツが来ねーかな、なんて思いながら。


自分のものじゃない机に、頭を置く。



「…………………」



次の時間には、ここには誰が座るんだろうか?



靴箱、ロッカー、教室、机に椅子。


高校生まではそれぞれに、沢山の “自分のための場所” が存在した。



教科書も、体操服も、何だって置いて帰りたいと思えば置いて帰ることができた。

会いたい友達がいれば、そいつの席、そいつのクラスに行けば、いつだって会うことができた。



それが今じゃ、授業を受けるための席すらも自分で確保しなければならない。



席の善し悪しは席替えではなく、自分次第だ。
時間割だって、自分で決めなければならない。



高校生の頃はそんな “大学生の自由さ” に憧れたりもした。



大学3年目の今になって分かる。

“決められる”ことが、どれほど楽だったか。



「…………………………」



目を閉じたまま、考える。


……今日こそは、挨拶くらいできるだろうか。



そんな淡い期待を性懲りも無く抱いてしまう。



いつも、会話は僅か2秒間。



“あんなもの”が唯一の接点だなんて、チャンスが無いにも程がある。



低めのチャイムの音が鳴り響き、欠伸をしながら顔を上げる。



「……………………」



もし高校生の頃の俺が見たら

自ら気になる子の近くにいけるなんて羨ましい

そんな風に思うんだろうか。



……俺はそうは思わない。



席が隣じゃなくても、同じクラスじゃなくても

その子がどこにいるか知ることができて

会いたい時に会いに行ける

その方がよっぽど幸せなことだ、と。



そう、前の席を見つめながら、思う。



こんなところで

一目惚れなんて、するもんじゃない。



他の授業は被ったことがない。

学部も確実に同じだとは言えない。

ちゃんと話すきっかけなんて、ありゃしない。



それでも、俺は僅かな希望を抱いて今週も君の後ろに座ってみる。



……俺ってこんなに女々しかったっけ。



いつか、

君と目を合わせて話せる日は来るのだろうか。



3年目の春

窓際の席はポカポカと陽の光で暖かい。



もうすぐ4月も終わる。



毎週月曜日、1限目。



「じゃ、出席とるぞー」



君に会える、唯一の時間。

3年目の油断、それから→



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設定タグ:THERAMPAGE , 川村壱馬 , 吉野北人   
作品ジャンル:恋愛
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しおり(プロフ) - このお話とってもすきです!続きも楽しみにしています! (2020年2月9日 20時) (レス) id: f2d61f7afd (このIDを非表示/違反報告)
kino.(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます(><)!そんな風に受け取っていただけて嬉しいです( ; ; )いつものろのろとお待たせしてしまって申し訳ないのですが、これからも見ていただけますと嬉しいです( ; ; ) (2020年1月5日 14時) (レス) id: ee69af6f8c (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - はじめまして!壱馬くんと主人公ちゃんのやり取りが可愛すぎます!この作品大好きです!更新大変だと思いますが、陰ながら応援しています!失礼しました! (2020年1月5日 8時) (レス) id: 67f82f89a4 (このIDを非表示/違反報告)
kino.(プロフ) - も。さん» コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけて凄く嬉しいです( ; ; )とてもお待たせしてしまうと思いますが、更新頑張りますのでお時間あります時に覗きにきていただけると幸いです。温かいお言葉にお応えできるように頑張ります(^^) (2020年1月5日 0時) (レス) id: ee69af6f8c (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 初めまして!大学生の設定ですがアーティスト本人の性格がとんでもなくそのまま出ていて、大学生らしい展開にいつも悶えながら読ませてもらっています!無理せずにご自身のペースで更新頑張ってください!本当に大好きなお話で沢山読み返させて頂きます! (2020年1月4日 22時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kino. | 作成日時:2019年12月13日 21時

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