5 ページ5
〈A side〉
「監督の都合で午後空いたから顔出しに来た。事情は朔から聞いたから、和のことは任せて早く行ってあげな」
なんてタイミングの良さ…
さすが松本潤。
「ありがとう松潤大好き」
それからはもう二人して必死に走った。
他の児童とトラブルがあった、と聞かされていたため、俺も朔ちゃんも職員室や会議室のような場所で話すのだと思っていたが、案内されたのは保健室だった。
入ると、養護教諭に宥められながらシクシク泣いている女の子と、その様子を黙って見つめるニーナが並んで座っていた。
「凜！」
「おにぃ、ちゃんっ、、」
女の子に駆け寄り抱き締める朔ちゃん。
「凜ちゃん、１回吐いちゃってますが、今は大丈夫そうです。病気ではないと思いますが、しばらくは注意して見ててあげてください」
養護教諭は朔ちゃんにそう伝えてから俺の方を向き、
「二人とも怪我はしてないので安心してください」
と控えめに微笑んだ。
「良かった…一体何事かと、、」
安堵の声を漏らす朔ちゃん、とは対照的に立ち尽くす俺。
ニーナもまた、俺の方を見ようともしない。
「…相葉さん？」
違和感を感じ振り返った朔ちゃんは、そのまま俺の見つめる先、ニーナに視線を移し、目を見開いた。
「新那ちゃん、その髪…」
…そう、ニーナの腰まであった蜂蜜色の髪は、肩より上で乱雑に切られていたのだ。
そしてそれ以上に衝撃を受けたのが、いつもニコニコしている子が初めて見せた、氷のような冷たい表情だった。
あの…と、保健室まで案内してくれた担任の先生が恐る恐るといった様子で口を開く。
「新那ちゃんが凜ちゃんを保健室まで連れて来てくれたんです。その時にはもう、この状態で………髪は教室に落ちてました…誰に切られたのか聞いたのですがまだ何も話してもらえてません…」
こんなことになってしまって申し訳ないです、と涙目で頭を下げる俺より若い先生に、
「いえ…」
と、歯切れの悪い返答しかできなかった。
一体、何があったんだろうか…
無理やり聞き出す…？
それとも、話してくれるのを待つべき？
…分からない。
俺の頭ではいくら考えたって分からない。
父親としての役目を果たさないと、いけないのに…
………父親？
父親だよね、俺、この子の。
それすらも分からなくなってきた。
「…ニーナ、」
なんとか絞り出した声は酷く頼りなくて、続かない。
そうこうしてるうちに、小さな口が開いて、俺は話を続けるチャンスを失った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 677人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻宮 - もうニーナぁぁぁなんて健気で純粋なんだ君は。櫻宮感動して涙が止まらないよ°･(ノД`)･°･まぁくんに全部話してほしい。と切に願う櫻宮でした！続き気になる！ (2022年2月4日 17時) (
レス) @page9 id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
希乃(プロフ) - 櫻宮さん» いつもコメントありがとうございます…！かなり遅くなりましたが、、もう少し進められるように頑張りますm(_ _)m (2022年2月2日 0時) (レス) id: b8e9a4bb02 (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - 移行おめでとうございます！先が読めない展開になってきましたね(^^;)続き楽しみです！ (2021年9月8日 18時) (レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：希乃 | 作成日時：2021年8月29日 17時
