【QK】誰も知らない恋を君と（kwmr） (ページ8)

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5 ポピーページ8

『お疲れさまです。今日は....？』

「いつも通り、お勧めで」

ツバキのブローチをつけた、白いワンピース姿の彼女は愛らしく微笑む。

わかりました、と。

その笑顔が僕に向けられるたび、さっと目をそらしてしまう。

なぜか直視できないのだ。

最近気づいてしまったそんな事実は、僕を意識させるのには十分すぎて。

“ぼく、きっときになっているんだろうな”

ぼんやりと浮かんだ文字列は初めからそうであったかのようにそこに横たわっていた。

誰だって惹かれるよ、それはもう。

ーー

僕はポピーで本の栞を作った。

ちょっとでも僕を意識してくれたら。

淡い感情とはこのことをいうのだろうか。

僕のカバンの前のポケットに丁寧に入れた赤い花のことを考えた。

「恋の予感」

洒落た花言葉を持つその花は、本当に僕の心みたいだ。

誰もいない自室で呟いた声は静寂に消えた。

ーー

珈琲の良い香りがする。

僕は本を手に取った。

本を読み終わるまで、それまでは、この感情を忘れてしまおう。

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「今日もすみません」

『いえいえ。何時間でも大丈夫ですから』

僕は百円玉を三枚取り出した。

ワンピースを着た彼女は少しだけ戸惑ったようだったが、すぐにもとに戻った。

僕のカバンをちらと見た彼女の目は少し泳ぐ。

そうして、僕の表情をちらと窺った。

何時もここでプレゼントを渡すからなぁ.....

でも、今日はむりなんだ。ごめんね。

『ありがとうございました。』

少し申し訳なさそうに、恥ずかしそうに、彼女はほほ笑む。

僕が送った花は乾かされてドライフラワーとなり、店内を彩っている。

「こちらこそ、ありがとうございました。」

そうして、二人でドアの前まで歩く。

少しばかりの気まずい沈黙。

僕たちがドアの前につき、彼女が足を止め、僕がドアの取っ手を押してから、僕は彼女の目を見た。

一つ息を吸った。

新鮮な空気が肺に取り込まれる。

僕と彼女は午後３時の日の光に包まれた。

「あ、そうだ、今日は本の中に僕を置いてきました。良ければ受け取ってやってください」

頬が紅潮を始める前に、僕は一つお辞儀をして扉を閉めた。

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ポピー「恋の予感」