【QK】誰も知らない恋を君と（kwmr） (ページ7)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:7,954 hit

4 ツバキページ7

『お疲れ様です。今日はどうなさいますか？』

丸眼鏡の彼が扉から顔を覗かせた。

私は、反射的にいつものフレーズを言ったのだが、彼はまだ店内に入ってきていなかった。

不思議に思って近寄ってみると、私の目の前にブローチが差し出された。

『これは…？』

もう常連になった彼はにっこりと笑って言った。

「ツバキのブローチです。貴方にぴったりだと思いまして」

「こういうものは梱包してくるべきなのですが、ここに来る道中にたまたま見つけて衝動買いしてしまったものでして…」

なぜこんなにこの人は素敵なのだろう。

『嬉しいですよ。ありがとうございます。』

そう告げると、彼は嬉しそうに目を細めてにこと笑った。

「今日もお勧めでお願いします」

『わかりました。』

本を彼が座ったテーブルの上において、私はコーヒーの準備をした。

気づいてくれるかな

『どうぞ』

珈琲のカップをテーブルの上に置いたときの、こと、という音が私は好きだ。

彼はぺこりとお辞儀をすると、カップを手に取って、珈琲を一口含んだ。

彼の眉がぴくと上がった。

妙な緊張感が覚えられる。

「あの、すみません」

『はい』

「間違っていたら申し訳ないのですが、今日の珈琲いつもと違います…よね？」

「とてもおいしいです」

なんでこんなにも彼は素敵なんだろう。

『よくわかりましたね。今日の珈琲はチョコレート風味のフレーバーコーヒーです』

「そうなんですね」

にこにこと応答してから少し視線を下げ、本に向きなおる彼は、とても様になっていて美しい。

今日も彼が時間を忘れてくれますように

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

ツバキ「控えめな優しさ」「誇り」