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山本side

『仁部井さん!これ使えそうじゃない?』

「いいんじゃないかな」

僕は今浮かれている。

自覚できるほどには浮かれている。


[我らが伊沢さんに、仁部井さんとの買い出しを頼まれて、二人で大手ショッピングセンターに来ている。]

その事実だけで僕は幸せになれる。


単純な奴だと我ながら思うが、確かに編集長は全人類の神だ。(断言)



前から思っていたのだが、仁部井さんは企画のことになると声のトーンが上がる。


それがふと気になって、何気なく聞いてみた。


『仁部井さんもクイズやるんですよね!どういうところが好きなんですか??』


「クイズですか?」

仁部井さんが少し早口になった気がした。

ちょっと驚いて仁部井さんの方を見ると、何時にも増して目が輝いている。

いいことでもあったかな、なんて考えていると、いつも静かな仁部井さんが早口で話し出した。

「まず、何よりも楽しいところですね。後奥が深いというか。知れば知るほどのめりこむようなあの感じが中毒性ありますよね。努力した分だけ答えられるようになるのも楽しいですね。知識が結び付くと新しい発見があるのもいいですね。大会とかでいい成績を残せたときの達成感も好きです。」

僕は戸惑ったが、同時に嬉しかった。

仁部井さんがこんなに話すのを見たのは初めてだったのだ。


「山本さんは、どういうところが好きですか?」


そのあとは、クイズのことで会話がどんどん盛り上がった。

買い物をしている間中ずっと、僕は幸せだった。

仁部井さんと初めて意気投合したような気がしたし、何より、仁部井さんから僕に問いかけてくれたのだ。

買い物は憎いほど早く終わってしまった。

帰り道、もうずいぶんと暗くなっていて、夜空がとてもきれいだった。

荷物は僕が持つと言ったのに、重いほうの荷物を持たれてしまった。

くっ、次は絶対に全部持ってやる……


会話が途切れたときにふと、

いま、仁部井さんと二人っきりで歩いてる

なんてことを僕は考えてしまった。


勝手に熱くなっていく頬を親指で触れながら、周りが暗くて良かったと思った。


ふと横を見ると、街灯に照らされたものすごく綺麗な仁部井さんの横顔があった。

今思えば、僕は勢いに飲まれていたのかもしれない。

とにかく、気づけば口走っていた。僕の意思に反して。


『仁部井さん、今日は月が綺麗ですね』


言ってしまってから自分が何をしてしまったのかに気づいて、僕は思わず口を覆った。

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キノミ(プロフ) - きゅーり。さん» コメントとてもうれしいです。ありがとうございます。こんな作者ですが気長に見てやってください。 (2020年4月12日 1時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)
きゅーり。(プロフ) - 執筆ご苦労様です。いつも楽しく拝見させて頂いております。次のお話がとても楽しみです。これからも更新楽しみにしています。頑張ってください。陰ながら応援しております。 (2020年4月12日 1時) (レス) id: 43974b99c2 (このIDを非表示/違反報告)
キノミ(プロフ) - クロさん» 応援とても嬉しいです。コメントありがとうございます。 (2020年4月12日 0時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)
クロ(プロフ) - 更新お疲れ様です。続きめちゃくちゃ気になります…!応援してます! (2020年4月11日 21時) (レス) id: 1340a6aafd (このIDを非表示/違反報告)
キノミ(プロフ) - わかれどころ。さん» コメントありがとうございます。拙い文章ですが、どうぞお付き合いください。 (2020年4月4日 17時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キノミ | 作成日時:2020年3月31日 22時

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