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特に解決策が見いだされないまま一週間が過ぎた。
その朝だった。
私が出勤すると同時に
須貝さんが大声を上げたのは。
「あああっ!!」
「え、どうしたん?」
「実験系記事が……全部……消えてる……」
『え』
他のメンバーは、しばらくの間リアクションをせずに目を見開いていた。
なんでだろう、と思っていたら、福良pが口を開いた。
「仁部井……さん…?」
「嘘……だよな」
『え……なに』
メンバーは皆想像以上に狼狽の色を示していて、私は不安になった。
「昨日、このオフィスを出たのって、仁部井さんが最後なんだよね……?」
『そう……ですが……』
私が答えた瞬間、場の空気が張り詰めた気がした。
「……実験系記事の編集のパスワードを知ってるのって、須貝さんと仁部井ちゃんだけだよね……?」
『そうです……が……』
「昨日、須貝さんはそもそも東京にいなかった……よね?」
その言葉で、わかってしまった。
あ、私今疑われているのか
皆のデータを消した犯人じゃないかって……
「仁部井ちゃん……」
編集長は信じがたそうに私を見た。
私はパニックになって、考えをまとめようとした。必死になって脳を使った。私じゃないと声を張り上げたかった。
なんていえばいい?私はやってないっていえばいい?でもそれはあまりにも弁解がましいし、きっと信じてもらえないに違いない。あまりにも疑われる要素が揃いすぎていて、どうしようもない。どうすればいい?どうすれば信用してもらえる?そもそも、どうしてこんなことになったんだろう。皆の誤解を解きたいのに解く糸口が見つからない。
というか……私は人為的に貶められたのだろうか……?
私は悔しくて、思わず唇をかんだ。
……それが間違いだったんだ。
「仁部井さん……だったんだね……」
私のしぐさを見て確信したのか、福良pの悲しそうな声が聞こえた。
否定しようと思ったが、声は出ない。
おぼれたように息が苦しくなって、何も考えられなくなって、一番大切な場所と存在を失ってしまうのが怖くて、私は立っていられなくなった。
めまいがした。視界がゆがんだ。
私はその場に座り込んで、山本君を見上げた。
山本君は、それはとても悲しそうな表情で、今にも泣き出しそうだった。
違うよ、私はやってないよ
そういいたかった
「ニブちゃん……」
そうつぶやく、美海のかわいらしい声が聞こえた。
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キノミ(プロフ) - きゅーり。さん» コメントとてもうれしいです。ありがとうございます。こんな作者ですが気長に見てやってください。 (2020年4月12日 1時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)
きゅーり。(プロフ) - 執筆ご苦労様です。いつも楽しく拝見させて頂いております。次のお話がとても楽しみです。これからも更新楽しみにしています。頑張ってください。陰ながら応援しております。 (2020年4月12日 1時) (レス) id: 43974b99c2 (このIDを非表示/違反報告)
キノミ(プロフ) - クロさん» 応援とても嬉しいです。コメントありがとうございます。 (2020年4月12日 0時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)
クロ(プロフ) - 更新お疲れ様です。続きめちゃくちゃ気になります…!応援してます! (2020年4月11日 21時) (レス) id: 1340a6aafd (このIDを非表示/違反報告)
キノミ(プロフ) - わかれどころ。さん» コメントありがとうございます。拙い文章ですが、どうぞお付き合いください。 (2020年4月4日 17時) (レス) id: 248af3a7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キノミ | 作成日時:2020年3月31日 22時