38話 ページ43
「いいな、容赦はなしだ！」
おっと、岩融が本気だ。
この状態で彼の攻撃を食らったら……
うむ、少なくとも重傷は確定だな。
いくら私が本気になったとしても
格下を薙ぎ払う彼に、勝てるはずはないからな。
平野藤四郎の突きを寸前で避け、私は岩融の後ろに下がる。
もうひとりの自分と対峙している彼は地面を蹴り、空中で薙刀を大きく振り上げて＿＿＿
「俺が恐ろしいか！」
ぶわっ、と近くにあった倒木が吹き飛んだ。
草木が風圧で押し潰され、物凄い風が辺りを駆け抜ける。本丸の屋根が飛び、審神者がその端正な顔を歪めるのがかろうじて見えた。それ以外は、何も見えなかった。
飛来した砂煙に思わず目を瞑る。
次に目を開けて岩融のほうを見ると、微笑んでいた。
「崩れたな。本気でやっただろう？
私の出番がなくなったじゃないか」
「すまんすまん、その通りだ。
まぁ、どうせ壊すのだから問題はなかろう？」
「まぁ、それはそうだがなぁ」
気絶しているらしい審神者を縄で縛りあげ、茫然としている刀剣男士たちの本体に札を貼りつける。分霊の顕現を解くことのできる札だから、岩融に触らせることは出来ない。
次々と刀に戻る刀剣達。
抵抗しなかったのはきっと……
彼らが井の中の蛙だったからだ。
自分たちよりも強い岩融に圧倒された、それだけ。
それが分かったら、なんだか可笑しくなるなあ。
「っははは、本当に岩融は強いんだな」
「俺が持っていると言いきれる、唯一の取り得なのでな。自らが相手であれば、実力を判断する事もなかろうと踏んだのが当たっていたようだ。さぁ主よ、他の刀達を集めに参ろうか」
崩れた本丸のなかに足を踏み入れる。
何故だかは知らないが、前を歩く岩融が大きく、大きく見えた。嗚呼……強くなったのか、彼は。そんな事実に気がついた。彼は、私の友人は、どこまで強くなるのか？
「……分からないな」
「どうした？」
「いや、別に。お前は何処まで強くなるんだろうと」
「ふむ……何処までだろうなぁ」
助手が強くなるのは構わない。むしろ嬉しく思うくらいだ。
だが、彼が限界まで強くなったとしよう。
彼は私の目の前から、いなくなるのだろうか？
それは少し、気に入らない。
……ふむ、私もこの感情に気づかぬほど鈍くはない。
ま、そういう日もあるだろうな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 632人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アヅマ(プロフ) - 浅葱さん» コメありがとうございます。そのお言葉がとても嬉しいです・・・！岩融も他の刀たちも格好良くかけるように頑張りたいと思います！ (2017年1月8日 18時) (
レス) id: 721b990030 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - とっても面白いです更新頑張って下さい♪( ´▽｀) (2016年12月30日 11時) (レス) id: d80fc865bb (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - マキーさん» コメありがとうございます。岩融かっこいいですよね・・・最近レベル90超えました((続きを待っていてくださって嬉しいです。更新頑張ります！ (2016年11月13日 17時) (レス) id: 721b990030 (このIDを非表示/違反報告)
マキー - 面白かったです!岩融いいですよね。更新頑張ってください、続き凄く楽しみにしています!! (2016年11月12日 13時) (レス) id: 2e62f948f5 (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - ☆NATU☆さん» コメありがとうございます。更新停滞気味ですが、頑張ります！応援嬉しいです・・・！ (2016年10月2日 21時) (レス) id: bb6b05b55f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
