検索窓
今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:611,659 hit

27話 ページ30

あれはそう……

何年前だったかは忘れたが
私がまだほんの子供だったころだ。


岩融には言ってあるとおもうが

私は生まれつき、刀に宿る付喪神が見える体質だった。

……まぁ分かりやすく言おう。
顕現されていない付喪神が見えていたのだ。

それを覚えておいて、この話を聞いてほしい。



私は小さい頃の記憶がほとんどない。

気がついたら自我が生まれていて、
気がついたらそこにいた、という感じで

私の記憶は始まっている。


ひとりぼっちだった。親も兄弟もいなかった。

嗚呼、気にする事はないよ。
それはそれで楽しかったんだ。

偶然通った農家の人間に拾われて

そこでしばらく過ごしていた。


今も私の腰に吊っている刀は
名無しだが、その時に拾ったものだ。

うむ、私も名刀だと思うぞ。


おっと、長谷部の話だったな。

私はあのとき、自分を養ってくれる人に迷惑をかけたくなくて、とある感情を押し殺していた。分かると思うが、それは「家族がいない寂しさ」だとか「同胞がいない悲しさ」だったな。

ある時、その感情がぶわっと溢れた時があったんだ。

誰にも相談できなくて、森へと走った。

何故森だったのかは今でも謎だ。
もしかすると彼と私を結び付けてくれたのかもしれない。


散々泣きながら走って
ついに疲れてその場に座り込んだ。

潤む目で辺りを見渡すと、一振りの刀が切株の上に放置されていたんだ。とても綺麗な刀だった。誰かが使っていたのだろうか……と、不思議に思った。

それを思わず手に取った瞬間



「まさか、幼子の手に取られるとはな」

「うわぁっ!?誰……?」



季節はずれな桜が舞って

切株の上に、さっき手に取った刀を腰に差している、半透明な男が足を組んで尊大な態度で座っていた。私の手にも同じ刀。その時は訳が分からなかったっけなあ。

美しい藤色の瞳をしたその男は



「……へし切長谷部だ」



呆れたような表情で自己紹介をした。

初めて聞いたその名前に
なんだか知らないが、感銘を受けた。

28話→←26話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (344 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
632人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アヅマ(プロフ) - 浅葱さん» コメありがとうございます。そのお言葉がとても嬉しいです・・・!岩融も他の刀たちも格好良くかけるように頑張りたいと思います! (2017年1月8日 18時) (レス) id: 721b990030 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - とっても面白いです更新頑張って下さい♪( ´▽`) (2016年12月30日 11時) (レス) id: d80fc865bb (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - マキーさん» コメありがとうございます。岩融かっこいいですよね・・・最近レベル90超えました((続きを待っていてくださって嬉しいです。更新頑張ります! (2016年11月13日 17時) (レス) id: 721b990030 (このIDを非表示/違反報告)
マキー - 面白かったです!岩融いいですよね。更新頑張ってください、続き凄く楽しみにしています!! (2016年11月12日 13時) (レス) id: 2e62f948f5 (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - ☆NATU☆さん» コメありがとうございます。更新停滞気味ですが、頑張ります!応援嬉しいです・・・! (2016年10月2日 21時) (レス) id: bb6b05b55f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アヅマ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年8月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。