第12-2話 ページ28
「どうしてそれを…？」
「俺、当時その事故の取材をしていたんですよ」
当時は大変でしたね、と笑う顔には気遣いも優しさも一切感じられない。
あの事故は当時センセーショナルに報じられ、家は勿論、入院している病院にも親戚宅にも通っていた学校にも隣近所にも友人の家にも親の職場にも、ありとあらゆる関係先に押し掛けたメディア。
有る事無い事を報じられ、最初は同情をしていた人達からも次第に迷惑をしていると言われ、メディアを信じ込んだ人々から誹謗中傷に晒され、俺の看病疲れだけではなく憔悴していく両親は喧嘩が増えた末に離婚し、俺と母は逃げるように引っ越した。
幼いながらに何故被害者である自分が逃げなければならないのかと憤って、引っ越してもなお追いかけて来たマイクに向かってぶちまけた言葉は、被害者本人であっても小さくて、大きな波に飲み込まれ、簡単に消され、面白おかしく歪曲された。
精神的にも肉体的にも疲弊した母は体と心を壊して高校の時にこの世を去り、その葬儀にさえメディアは押し掛けて来た。
当時のことを思い出し、襲い掛かる怒りと嫌悪に拳を握り締める。
冷静になれ。感情の揺れを見抜かれるな。弱味を見せたら過去の二の舞になる。
「TOKYOMERのメンバーの中になーんか見覚えがあるような顔があるなぁと思って調べてみたら、あの事故の被害者の君だというじゃないですか」
その顔はただ獲物を見つけたというように愉悦に染まっている。
「やっぱりあの事故がきっかけで医者を志したんですか？もし自分と同じような人がいたら助けたいとか？お母さん、心労と過労で亡くなったんですよね？加害者に復讐したいと思いますか？」
次々と投げ付けられる不躾な質問はあの頃と変わらない。それどころか、当時は俺が幼いからこそ相手にも少しばかりの情けがあったのだと皮肉ながらも気付く事となった。
ずっと母は、こんな剥き出しの悪意や興味や好奇心や、多くの感情をぶつけられていたのだと思うと、焼け爛れたように心が痛む。
俺が事故に遭わなければ良かった。お前のせいで母は死んだのだと、母の葬儀の時に母を、娘を溺愛していた祖父母から憎悪の念をぶつけられた。
別れてから一度も会った事のない父からも別れ際に憎悪をこもった目を向けられた。
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はる(プロフ) - このお話大好きなのですが、もう更新されませんよね‥もっと読みたかったです (6月15日 22時) (
レス) @page29 id: 6c02acd669 (このIDを非表示/違反報告)
ウサダ - かりんさん» 感想ありがとうございます！キュンキュンしていただけたらなんて嬉しい限りです！主人公も好きとのお言葉感謝感激です！ (2021年8月25日 12時) (レス) id: cb9932fe74 (このIDを非表示/違反報告)
かりん(プロフ) - はじめまして!いつもこの作品楽しく見させていだいてます。音羽先生と喜多見チーフがかっこよくてキュンキュンしながら、見てます（笑） 男主くんのキャラ大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(*^_^*) (2021年8月23日 5時) (レス) id: b0e233bdb7 (このIDを非表示/違反報告)
ウサダ - mikanさん» いえいえ、コメントありがとうございます。 (2021年8月16日 8時) (レス) id: cb9932fe74 (このIDを非表示/違反報告)
ウサダ - 澪響さん» ありがとうございます！これからも読んでいただけるように頑張ります！ (2021年8月16日 8時) (レス) id: cb9932fe74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウサダ x他1人 | 作成日時：2021年7月20日 11時
