【夏目友人帳】拝啓、愛してます。 (ページ5)

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彼ページ5

゜

　「よし。それじゃあ張り切って見つけるか！」

　「おー！」

　あれから数日。藍は度々俺の部屋にやって来たが、何れもその″彼女″の惚気だったり近況報告であったり彼女の目撃情報だっりと只々話していくだけで、俺を無理にでも彼女の捜索に連れ出したりはしなかった。
　会いに来るのも夜の八時頃、しかも俺が自分の部屋に居る時だけで、外で会っても決して話しかけてはこなかった。

　どうやら藍は人間社会の仕組みを理解しているらしい。

　ニャンコ先生曰く、

　「見たところ彼奴はかなり昔から存在している。下手したら私よりな。だから、他の奴等と違って自分が特定の人間にしか見えないこと、そして人間達が自分達の存在を恐れていると同時にとても醜い生き物だということも知っている。だから彼奴は、見えるお前がそっちで苦労しないように気遣っているのさ」

　ということだった。
　妖にここまで気を使われたら俺もその分をきっちり返さないといけないだろう。それ故か、俺は珍しく物凄く張り切っていた。

　「ですが夏目殿、宛はあるのですか？」

　「嗚呼、その点は心配しないでくれ。お前の話を聞く限りその人の容姿はなんとなく分かったし、毎晩持ってくるその目撃情報を辿っていけばいいのさ」

　「成る程、流石夏目殿。して、何処から攻めますか」

　「あ、いや、それがさ」

　俺は気まずそうに目を泳がせる。藍の期待の眼差しと金髪がきらきら光っていて目と良心が痛い。なかなか言い出せない俺に痺れを切らしたのか、ニャンコ先生は俺の後ろから出てきて言った。

　「先程あんな大口を叩いたが、実は目星を全くつけていないんだ。似ているという目撃情報が多すぎて、出かける寸前まで考えていたんだこの阿呆は」

　「なっ、仕方ないだろ先生。俺も色々あったんだ」

　「知っているか夏目。そういうのを人間の間では″言い訳″と言うそうだぞ」

　ニィっと口角を吊り上げるニャンコ先生。眉毛は八の字に曲がりひたすら俺を煽ってくる。堪忍袋の緒が切れた俺は先生を左拳で殴った。

　「煩いな先生！そこまで言わなくてもいいだろ！」

　「な、なんで私が殴られるんだ……」

　「サ、サウスポー」

　藍が笑いながらそう呟く。

　「兎に角だ、先ず隣町に行ってみよう。何か掴めつかもしれない」

　「はい、分かりました。確か駅近くの公園で見たとか」

　「駅近くの公園だな。行くぞ、先生」

　そうして俺達は隣町へと向かった。