【夏目友人帳】拝啓、愛してます。 (ページ3)

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　お察しの通り、それが私の探している人です。
　それから友人とは別れ、私のことを見えない人間に悪戯をする日々が続きました。その娘はリアクションがとてもよくからかい慨があるというもので、来る日も来る日も年月を忘れ私はその娘と一緒に居ました。
　ですが私も一つの社を持つ者。そんな楽しい時間などは秋が魅せた幻想に過ぎず、もとの場所へ帰る前日、私は彼女とは別れあの出会った通学路なる場所へ行き一人空を見ては黄昏て居ました。

　秋晴れとでも言うのでしょうか。その日は憎たらしいぐらいに青空がどこまでも広がっていて、澄んだ青に白い雲が非常に映え、何年かに一度見るか見ないかの空でした。
　人も妖も、空を見ると無性に何か言いたくなるのでしょうね。私はぽつりと呟いたのです。

　「今日は、綺麗な空だな」

　「ええ、本当」

　あの時は驚きました。誰も居ないと思っていたところから声がしたんです。私の下の方からよく聞いた高いく穏やかな声が。
　それは私が悪戯をしていたあの娘の声で、私は如何していいかも分からずつい二言三言彼女と話してしまいました。朗らかに笑う彼女の笑顔と落ち着いた声はどこか懐かしく、私は憎たらしくも恋に落ちたのです。

　彼女は私が妖だと知らなかったのでしょう。それでたまたま見えた私の戯れ言にのり、少しの間だけ友人になれた。それだけでも感謝しなくてはならないのに、欲深い汚れた私はそれだけでは満足できなかった。せめて、せめて今彼女が如何しているかだけでも知りたいのです。

　あの頃からだともう相当な歳になっているでしょう。人間で言うと四十ぐらいでしょうか。

　「夏目殿！今一度お頼み申し上げます。どうかこの下等な妖に希望を！」

　「希望をって言われてもなぁ……。第一、俺が協力したところで本当に見つかるのか？この町にいるとは限らないし、下手したらもうってこともあるんだぞ」

　「その辺はご心配ありません。彼女がこの町に居ることは分かっております故」

　「そうは言ってもなぁ……」

　この妖の言っていることも分からなくはないが、その女の子だって本当にこいつのことが見えていたのかと言うと少し怪しい。
　今は四十代だって言われたところで俺には手が打てなさそうだ。

　俺には、こいつの望みを叶えてやる力なんてないのだから。