【夏目友人帳】拝啓、愛してます。 (ページ1)

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尋ね人ページ1

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　俺は昔から変なものを見た。それは所謂妖と呼ばれるものの類。
　それ故、ここでは言えないような様々な仕打ちをさせられたものだが、今居座らせてもらっている藤原夫妻には非常によくしてもらっている。
　温かいお風呂も、綺麗な衣類も、美味しいご飯ももらえる。それにここに連れて来られて田沼やタキ、名取さん達のような素晴らしい出会いにも恵まれた。俺の周りにはいつの間にか大勢の妖や人の笑顔で溢れていた。レイコさんが残した友人帳のせいで未だに苦労は絶えないが、それもまた楽しいと思ってしまっている自分も居るが、それでも俺は幸せ者だ。

　そう思っていた。ついさっきまでは。

　「夏目殿。是非私に力をお貸しくださいませ。この通りで御座います！」

　俺の目の前で深々と手土産と共に土下座をする仮面を被った妖。
　俺のことを「夏目殿」と呼ぶってことは俺があの夏目レイコの孫だと知っている妖ってことか。

　「おいおい夏目、お前もデカくなったもんだな」

　「ニャンコ先生！冗談でもそんなこと言うなよ」

　「如何でしょうか……。夏目殿は妖と人間との狭間に生きるとても力のお強い方だとお聞きしていました。私は、会いたい人間が居るのです。どうしても、どうしても会いたい人間が」

　顔を下げたまま誤情報をつらつらと言ってゆく妖。畳には薄っすらとした涙の後がついては消えていった。

　……何か始まった……。

　「おい夏目。此奴こちらが訊いていないのに何か始めたぞ。いいのか？」

　「シッ！先生、余計な事を言うな」

　「だってぇー」

　「あの、いいですか？聞いてます？」

　「あ、ああ悪かったな。続けてくれ」

　「はい」

　明らかに苛ついていた声色から一転。光に反射しながら光る金髪を揺らして妖は続けた。

　「これは何年も前のお話になるのです。あれは、よく晴れた丁度今ぐらいの時期のことでした」