【男主】常識人って貴重だと思うんだ【文スト】 (ページ7)

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Loser ページ7

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「お仕事ですよー太宰さーんどこですかー」

書類を持ってぱたぱたと駆けている。

またあの人はサボりか！

事務フロアを抜け、探偵社屋からも出て、うずまきに向かう。

大体この喫茶店にいるのだが、いるだろうか。
おばちゃんに迷惑かけてなきゃいいけど……。

「今日は。太宰さん来てませんか？」

「見てないねえ。又たサボりかい？」

「そうなんですよ……見付けたら簀巻きにして置いといて下さい」

「はいよ」

ここにはいなかった。となれば河か、河か、河。
ああ厭だなあ。転職しようかな。

最寄りの河まで歩く途中、鉄の臭いが鼻を突いた。

すん、と嗅いでみるとそれはやはり、血の臭いで。
路地裏から漂ってくる。

普段なら様子を見に行くが、どうせマフィアが誰かを殺しているのだろう。

でも拙い。

間に合わなかったとしても、助けに行かなかったとなれば探偵社の名折れだ。
そんなことはあってはならない。絶対に。

俺は血の臭いが強くなる方へ向かった。血溜まりが靴の裏を汚す。

「……あ？」

後ろだ。

慌てて躰を反転させ、後ろに飛びすさる。
頬を黒い何かが掠めた。

「貴様、探偵社の……」

「お前は、マフィアの……」

「異国人」

「芥川」

次々と飛んでくる外套を避けられるほど、俺は器用ではなく。

肩を貫き、太腿を掠った。

血が噴き出す。頭がくらくらしてきた。

腰に黒いものが巻き付き、黒い刀が俺の頸を捉える。

あ、待って、俺、死ぬ――――？

「はいはい喧嘩は止め給えよ」

と、包帯まみれのあの手が外套に触れ、それはなりを潜めた。

「太宰さん!?」

「なんで……俺、」

「ごめんねカフカ君。遅くなっちゃった」

立っていられずに倒れ込む俺を彼は優しく抱き留めて、ぱっと離す。
地面に額を打ち付けた。

「さあ帰った帰った。云っておくけれど芥川君、君じゃカフカ君には勝てないよ」

「何を……見たでしょう、奴の愚鈍さを。異能すら使って来ませぬ」

「彼は自分の異能が嫌いなんだ。だから使わないんだよ」

「ですが！」

「いいから帰り給えよ。見逃すと云っているのだよ？」

「ぐ……」

意識が朦朧としていく中、はっきり聞こえていた二人の会話。

太宰さんは俺を買い被っているな、と自嘲気味に笑い乍ら、俺は意識を失った。