平和すぎる、何か起こりそう ページ5
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先ず足を取って、皿に分ける。
公平にじゃんけんで、と云ったのだが、探偵社員( 一部 )に通じる訳もなく。
「あーっ! 猫! 猫が飛んでる!」
「騙されるか!」
「ねえそれ僕の!」
「早い者勝ち。私が一番早かった」
「あッ太宰さん返してくださいよう!」
「ふふふ、未だ未だだね! あとカフカ君お茶!」
ドゴッ、と轟音が響いた。
それは勿論、俺が壁を殴った音で。
辺りは静まり返り、時が止まったかのように皆動かない。
「いい加減にしてください」
満面の笑み。
この人たちは本当に常識がない。驚くほどに常識がない。
生きてこられたのが奇跡と云っても過言ではないくらい、常識がない。
俺がしっかりしなくちゃ崩壊するんだ。頑張れ俺。
頑張れ、俺……。
「俺が仕切ります。国木田さんは太宰さんを縛ってください」
「任せろ」
「ひっどーい! なんで!?」
なんで!? と云い乍ら蟹を食べている辺り、それですよそれ。
「ちゃんと太宰さんにもあげますから、じっとしててください。では、皆さん並んで」
事務椅子に縛られた太宰さんを横目に、俺は一列に並ぶ皆に蟹を配った。
蟹味噌だって人数分に分けてやる。
一人ずつローテーションで美味しく頂けましたとさ。
「太宰さん、ほらあーん」
「なんで? 男のあーんは厭だよ私」
「えっいいんですか! いただきま――」
「嘘です! 嘘でーーす!!」
こうして蟹を食べさせていると、介護している気分になる。
恋人なんてものではない、決して。この人が恋人だったら胃が無くなる。
実際、毎日が介護みたいなもんなんですけどね。
「おかわり」
「頭が高い」
「おかわり頂戴」
「日本語判んないんですか? 外人の俺でも判るんですよ? 母国語でしょ?」
やりすぎだって? 足りないくらいだ。
こんな時でもなきゃ、日頃のうさは晴らせない。
「おかわりください」
「はーい三分待ってくださーい」
「カップ麺じゃん……」
あっという間に蟹は無くなり、残骸は無残にも捨てられる。
代わりに得たものと云えば、皆の満腹と幸福――……いや、待て。
「お疲れカフカ君。ほどいて」
「何か忘れてる、ような……」
「私の縄をほどくことだよ屹度」
「思い出せない……なんだ?」
「なーわーをーほーどーくーこーとーだーよー」
「うーん……」
「ほどいてよ! 羞恥プレイも放置プレイも焦らしも嫌いだよ私!」
……あ。
「俺、蟹食ってないわ」
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作者名:きのこ派 x他1人 | 作成日時:2016年10月12日 17時