炬燵と云う名の悪魔 ページ3
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「炬燵……ですか?」
「ああ。実は太宰が貰ってきたらしくてな……寮にも入り切らん」
「何処に置くんです?」
「それが問題なのだ」
そう云って国木田さんは、眼鏡を押し上げた。
ふむ……炬燵と云えば冬の風物詩。確かに朝夕は冷える秋だが、炬燵要るか?
炬燵なんて出した日には、太宰さんがもっと駄目になる事請け合いだろう。
賢治君も昼餉を食べた後に炬燵で寝てしまうかも知れないし。
「なら、社長室に置き、国木田さんが仕事をしていたと認めた人だけ、休憩中の使用を許可する……というのは」
「いい案だが、それなら俺は太宰を入れん。一生な」
「それがいいと思います」
頷き合った俺達は、太宰さんの寮から炬燵を運び出す事になった。
*
「んじゃ、行きますよ。スイッチオン!」
コンセントを繋ぎ、電源を入れる。
暫くは冷たいままなので、その間に仕事を片付けよう。
「おおっ暖かい!」
「早ッ!?」
幾ら何でも疾過ぎないか。
いやでも、大きいサイズの炬燵なので、仮令仕事を終わらせてからでも入れる筈だ。
と云うか……
「なんであんたが入ってるんですか」
「え? 先ずは試運転をと思ってだねえ」
「いやそれはもう社長に頼みました」
「なんで」
「なんでも」
太宰さんの向かいでは社長が炬燵に入って、読書している。
社長の仕事は要人の応接だったり、重要会議だったりの時だけなのだ。
「国木田さーん、太宰さんが炬燵入ってるんですけどー」
「ああ。知っている」
「国木田さん!?」
見れば国木田さんまでもが、炬燵に寝転んでいた。
待て。嘘だろ? 嘘ですよね? 夢?
理想の権化と呼ばれる国木田さんが、仕事を放ってだらけるなど……。
「帰ってきて下さい国木田さん!! 俺……って敦君!?」
「あ、カフカさん。お先にお邪魔してます」
「なんで!? ああっ賢治君、炬燵で寝たら風邪引くよ!? ほら毛布!」
社長、太宰さん、国木田さん、賢治君、敦君。
全員炬燵で温まっている。
それどころか、与謝野女医や谷崎兄妹、鏡花さん、乱歩さんも暖を取っているじゃないか。
「カフカ君も入りなよ〜、温まるよう」
「お前は働きすぎだ。少しは休め」
「ありがたいのか判らない!!」
足首を掴まれた。
「誰ですか今足掴んだの!?」
「私。先刻から寒そうだったからねえ」
「〜〜〜ッもう!! 五分入ったら仕事しますよ!!」
一日潰れました。
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作者名:きのこ派 x他1人 | 作成日時:2016年10月12日 17時