[短編集] My Darling

＊どんな姿も愛させて / K.Kawanishi ページ11

　
　
　
　
「賢志郎、これどうかな？」
　
　

　帰ってくるなり、Aが聞いてきた。

　目の前に翻された、鮮やかな色。

「……それは、どっち？」

　ソファに寝転がった俺に、嬉しそうに見せてくるけど。

　俺には下着なんか水着なんか、区別がつかんねん。

「水着ですー」

「あ、そう……」

「もうちょっと感想ないの？」

「そう言われてもなあ……」
　
　
　
　
　Aは来週だったか再来週だったか、大きいスパのあるホテルに旅行行くらしくて。

　水着って言われて、その旅行のために買うたんやってわかった。

　でもそれ、俺行かへんしなあ。

　感想求められても、着てるとこ見れるわけでもないし。
　
　
　
　
「……ほな、着てくれへん？」

「えっ、今？」

「俺行かれへんし、一番に見せるくらいしてくれてもええやん」

「うーん……」

　渋るA。

「見せてくれたら、感想言うから」

「……わかった」

　水着持って一旦、部屋に引っ込んだ。
　
　
　
　
　10分くらいして、

「……着たよ」

　声がした方を振り向いた。

　おお、似合てるやん。

　でもやっぱり、下着とどう違うんかわからんなあ。

　Aは恥ずかしそうに、スカートのとこを引っ張ってる。

「めっちゃ可愛いで」

「えっ、あ、ありがとう……」

　ちょっと赤くなってる。

「自分で選んどいて、恥ずかしいん？」

「だって、そんなじっくり見なくても……」

「今しか見られへんから」

　とは言いつつ。

　その微妙に隠された状態を見せられてると。

　もう触れたいし、全部見たい。

　腕を強く引いて、ソファに引き倒す。

「わ、なに、」

「……脱がしていい？」

「もう、すぐそうなると思ったから着たくなかった、っ、」

　俺のことを簡単に見抜いてくるその生意気な口を塞いで、両手はソファに押し付ける。

　首筋から鎖骨、胸元まで何度もキスを落として。

　確実に色を孕んでいくその目を見上げた。

「……で、ええの？」
　
「だめって言っても、やるでしょ」

　少し○んだ目で、拗ねたような顔されて。

「さすが、ようわかってんなあ」

　思わず笑いが漏れた。
　
　
　
　
　

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