凛々しさを欠いても 02 ページ23
微かなテレビの音で、目が覚めた。
まだ起きるには少し早かったけど、ベッドから出る。
リビングにはAがいて。
着替えて、肩にタオルを掛けたままコーヒーを飲んでた。
「あ、おはよう」
俺に気づくと、いつもの笑顔で言った。
「おはよ」
昨日と違いすぎて、笑てまう。
「なに、顔ひどい？」
「いや、ごめん、昨日はよう飲んでたなあと思って」
「ほんと飲みすぎたー……タクシー乗ったとこまでは、覚えてるんだけど」
「ちゃんと帰ってきてたで。玄関までは」
「……運んでくれたの？」
「さすがに、ほっとかれへんやん」
「ありがと、ごめん……」
俯いて、カップに視線を落とす。
隣に座って、半乾きの髪を撫でた。
「ええって。楽しく飲めたんなら、良かったやん」
「麻里子が水田さんの話たくさんしてくれて、それはそれで面白かったんだけど……」
「けど？」
……水田のおもろい話って、どんなんやろ。
「聞いてたら、だんだん、賢志郎に会いたくなって。でも他の同期もいたし、なかなか帰れなくて……」
なるほど。
あんなに酔うまで付き合わんと帰ったって、多分誰も文句なんか言わへんのに。
Aのことやから、帰りたいって思いながら、他の人の愚痴とか相談とか、ちゃんと聞いてたんやろな。
いじらしくなって、頭を引き寄せて、キスした。
「なに、急に……」
「好きやったら、しとかなあかんねやろ？」
「え？」
「Aが言うたんやで」
「……昨日？の夜？」
「うん」
「やだ、忘れて！」
顔が真っ赤になる。
「それは無理やわー、あんなに俺に」
「言わなくていいから！」
手で口を塞がれた。
慌ててるとこ、ほんまおもろい。
「……あ、遅刻しちゃう」
ふと時計を見て、手を離した。
急に意識が仕事に向いて、顔つきが少し変わる。
相変わらず切り替えの早さ、えげつないな。
「いってきまーす」
完璧に支度して、そう言って颯爽と笑うAと。
「どこにも行かないで」
酔っ払ってそう泣いてたAと。
ほんまに、どっちも好きやから。
Aこそ、どこにも行かんといて。
fin.
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理架(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。私自身、関西弁に明るくないので書き分けができているかは心配でした。なのでそう言っていただけてとても嬉しいです…！ありがとうございました(^_^) (2021年6月9日 21時) (
レス) id: c81664a4ee (このIDを非表示/違反報告)
かな - 口調がそれぞれ芸人さんによって違っていたのがすごいと思いました。書き分けられるのがほんとに凄い。ましてや関西弁の微妙な使い方の違いを表現できるのが凄いです。とっても面白かったです。 (2021年6月8日 20時) (レス) id: d718207ee3 (このIDを非表示/違反報告)
理架(プロフ) - りりさん» ありがとうございます！こちらこそ何の告知もなくリクエスト締切ってしまってすみません( ; ; )それでも最後までお読みいただいて、好きなんて言ってくださって嬉しいです(^^)また次の機会ありましたら、よろしくお願いします。お付き合いありがとうございました。 (2020年8月12日 13時) (レス) id: c81664a4ee (このIDを非表示/違反報告)
りり - 理架さん、完結おめでとうございます！リクエストできずじまいですみませんでした、最後まで楽しませていただきました。理架さんの書く二人のお話、甘く、でも甘すぎず本当に好きです…！また何か書かれるときは、ひっそりお邪魔したいと思います！！ (2020年8月12日 11時) (レス) id: 04bb664250 (このIDを非表示/違反報告)
理架(プロフ) - メイさん» ありがとうございます！自分の中の賢志郎さんがどんどん形作られていって皆さん入り込めてるかな、と心配なときもあったのですが、実在するようとまで言っていただけてとても嬉しいです(^^)次またお会いできるよう、力を蓄えます！お付き合いありがとうございました。 (2020年8月12日 10時) (レス) id: b779c93715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：理架 | 作成日時：2020年6月19日 13時
