riverside days

真夜中サプライズ 02 ページ7

「Aー」


　だらけきった顔で、まだ靴も脱いでいなくてベロベロの賢志郎を、ひとりで運べる自信はなかった。


「中まで運びます？」


「すみません、お願いします」


　濱家さんは靴を脱ぎ、賢志郎の靴も脱がせる。


　私から腕を解いて部屋に連れていく。


「賢ちゃん、立ってって」


「ええー？ なんや、なんで濱がおんねん」


「やかましわ」


「あ！ 濱家さん、左の部屋です！」


　賢志郎の部屋を教えると、ありがとーと言って部屋に入っていった。


　すぐにリビングに出てきて、


「ベッドに投げときました」


って言いながら玄関に向かう。


「ありがとうございます、助かりました！」


　そう言って頭を下げる。


　濱家さんは靴を履きながら、振り返る。


「……一緒に住んでんの、秘密やってんな？」


「はい……」


「言わへんから、安心してな」


「すみません、ありがとうございます」


「ほな、お邪魔しましたー」


　濱家さんが出ていく。


　足音が聞こえなくなったのを確認してから、鍵とチェーンをかけて部屋に戻った。


　ベッドで寝ている賢志郎の頭を撫でる。


「飲みすぎだよ、もう……」


　その言葉が聞こえたのか、賢志郎はうっすら目を開ける。


「ん〜、A……？」


「なに？」


「水ほしい」


「はいはい」


　立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルを出して戻る。


「はい、お水」


「飲まして。口移しで」


　なぜか酔うと甘ったれモードになるおっさん。


　ここまで酔ってたらどうせ覚えてないんだから、そんな甘えには乗らないに限る。


「やだ。自分で飲んで」


「嫌や、Aがええ」


「だーめ」


「嫌やーAー」


　子供のように駄々をこねる。


　だめ、嫌や、の応酬を続けているうちに、賢志郎はまた眠ってしまった。


　今度こそ寝息を立てて寝始めたのを見届けて、布団をかけて、ペットボトルをベッドサイドに置く。


「Aー、愛してんでー」


　はっきりと聞こえた寝言。


　……そういうのは、酔ってないときに言ってよ。


　そう思いながらも、頬が緩む。


　明日の仕事の予定がわからないけど、これだけ飲むってことは、始発の新幹線とかはないんでしょう。たぶん。


　とりあえず7時にアラームをセットしておいてあげて、頬にそっとキスをして、自分の部屋に戻った。

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