riverside days

白シャツ至上主義 01 ページ48

(side : 賢志郎)
　
　
　
　
　突然の豪雨にやられて、家に駆け込んだ。

　玄関に転がったヒールを見つけて、Aを呼ぶ。

「Aただいまー、悪いんやけど」

「おかえりー、はい！」

　タオルを少し手前から投げてくれた。

　さすが、察しが良い。

「ありがとう」

　タオルで荷物と靴を拭く。

　無事なのは、咄嗟に抱え込んだガーメントバッグくらい。

　それ以外はかなり濡れた。

「急に降ってきたねえ」

　見れば、Aも俺以上に濡れてて、タオルで髪を拭いてた。

　……って、何なん、その格好は。

「めっちゃ濡れてるやん。早く風呂入り」

「うん、今沸かしてる。賢志郎先に入る？」

「いや、A先でええよ。……シャツ透けまくってんで」

「えっ？」

　白いシャツはその色を変えて、しっとりと肌に張り付いてて。

　その、いろいろ、目のやり場に困る感じで。

　困るとか言いつつ、見てしまうんやけど。

「もう、何しっかり見てんの……！」

「ごめん、いや、見るやろ、それは」

「えー……やめてよ……」

　拗ねたように口を尖らせる。

　あ、何かもう、あかんわ。

　急に触れたくてたまらなくなって、俯きかけたその顎を掴んで、キスを落とす。

　何度も深く求め続ければ、強張ってた身体から力が抜けていくのが、わかる。

　唇を解放すると、ちょっと潤んだ目に見上げられる。

　その妙な色気に、いつも囚われる。

　もっと触れたいのに、濡れたシャツの感触が邪魔で、ボタンに手をかけた。

「待って、お風呂入らなきゃ」

　物欲しそうな顔してるくせに、まだそんな抵抗をする。

　目線を合わせて、安心させるように笑ってみせる。

「ほんなら、このまま一緒に入ろか？」

　一瞬迷ったように視線を逸らすけど、答えはわかってる。

「……うん……」

　やっと捕まってくれた。

　と思ったら、俺のシャツにも手が伸びて。

　ボタンを外し始める。

「え、何で、」

「……私だけ脱がされるの嫌だから」

　わかるようなわからないような理由。

　でも替わりに脱がせてもええってことやんな？

　先に俺がボタンを全部外し終えて、露わになった胸元に口づける。

「あ、私、まだなのに」

「早いもん勝ちや」

　シャツを肩から外して、あとは袖だけ。

　そこで、給湯器のアラームが鳴った。

　Aはボタンを外し終えると、俺の腕を引く。

　嵌ってくれると、えらい積極的になるよなあ。
　
　
　
　

白シャツ至上主義 02→←hard lock heart 03

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す