riverside days

hard lock heart 02 ページ46

(side : 賢志郎)
　
　
　
　
　玄関のドアが閉まる音で、目が覚めた。

　時間的にはそれなりに寝たはずなのに、疲れが取れてない。

　はっきりしない頭のまま、コーヒーをカップに注ぐ。

　何か食べるもの、と思ったけど、いつもより食料が全体的に寂しい。

　朝すぐに食べれるものは、Aが買っといてくれてたのに。

　買い物、行けてないんかな。

　そういえば、一昨日、生放送休んだとき。

　俺が寝てる間に出て行って、夜も相当遅かった気がする。

　脱衣所で洗濯物を確認すると、珍しく溜まってて。

　一つ一つ見ていけば、Aが忙しかったことくらい、いくらでもわかったのに。

　自分の忙しさに負けて、Aがやってくれるのが当然、気を遣ってくれるのが当然、みたいにどっかで思ってた。

　今日帰ってきたら、ちゃんと謝らなあかんなあ。

　そう決めて仕事に向かった。
　
　
　

　帰ってくると、Aももう帰ってきてた。

　ただ、自分の部屋にいて、鍵もかけられてた。

　……何やねん、人が謝ろう思てんのに。

　そっちがそんな態度なら、もうええわ。

　絶対、俺からは謝らんからな。
　
　
　
　
(side : A)
　
　
　
　
　賢志郎の顔を見なくなって、2日。

　一緒に住んでても、すれ違おうと思えば、いくらでもできるんだな。

　よく今まで、ほぼ毎日、顔合わせてきたなあ。

　そんなことを考えながら、今日もビールを片手に自分の部屋でテレビを見る。

　この前の水曜日のお昼の番組を再生する。
　
　……あれ、賢志郎、出てないの？

　え、前の日熱あったからお休み？

　全然知らなかった。

　ネットニュースを調べてみたけど、体調のことはほとんど書かれてなかった。

　かわりに、木曜日に和牛キッチンの生配信があったことを知った。

　アプリを起動して、映像を見てみる。

　少しだけ無理してる気もするけど、なんとか配信はやれていて。

　でもかなり疲れたんじゃないかな。

　……木曜って、喧嘩した日だ。

　特別疲れて帰ってきたのに、私が、おかえりも言わないで、呑気にテレビ見てたから、あんな風に言ったんだ。

　私が自分の忙しさに飲み込まれて、賢志郎が体調崩してることにも、気づかなくて。

　次会ったら、謝ろう。

　そう思っていたのに、それから3日間、賢志郎は帰ってこなかった。
　
　
　
　

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