riverside days

トリガーエフェクト 03 ページ41

(side : 賢志郎)
　
　
　
　
　朝起きてみたら、Aは隣で寝てた。

　自分を守るように、身を縮めて。

　目の淵に涙も溜まってる。

　その姿に、昨日の自分を思い出す。

　俺、何してん。

　つまらん嫉妬して、Aを傷つけた。

　ゆずるとは何もないって、ちゃんとわかってたのに。

「……ごめん」

　聞こえていないのはわかってるけど、謝らずにはいられなかった。

「ごめんな……」

　もう一度謝ると、ゆっくりとその目が開いた。

「おはよ……」

　力なく笑う。

　その顔で、もう俺の感情を見抜かれているんだとわかる。

「ごめん、A。ほんまごめん」

「……私も、ごめんね」

「Aは悪くないやん」

「でも、……嫉妬、したんでしょ？」

「っ、それは、」

　なんでそんな楽しそうに言うん？

「ふふっ、賢志郎にもそういうことあるんだね」

「ごめん、もうしないから、忘れて」

「どうしよっかなあ……。じゃあ今日、なんか甘いもの買ってきてくれる？」

　なんでそんなに優しいんかなあ。

　殴られてもおかしくないくらいのことしてんのに。

「……わかった」

「楽しみにしてる」

　結局、俺だけが人間ができてない。

　Aもゆずるも、ちゃんと大人やのに。

　許してもらったかわりに、置いていかれた気分になる。

「……賢志郎、もう仕事でしょ？」

「うん。支度してくる」
　
「ん、私、もうちょっと寝てるね」

　やっぱり、起きられへんのか。

　ほんまに俺、むちゃくちゃしたんやな。

　でももう、これ以上謝るのは意味がない。俺の気が済むだけで、Aが辛くなる。

　だから、まだ残ってる後悔は自分の中に収めて、やり過ごすしかない。

「いってらっしゃい」

「行ってきます」

　仕事が終わったら、一番に、何を買って帰るか考えなあかんな。
　
　めったに言われないわがままにすら、救われた気がした。
　
　
　
fin.
　
　
　
　


――――
りりさんよりリクエストいただいた、
「ヒロインにめっちゃ嫉妬する川西さん」でした。
ご期待に添えてるか心配ですが、
いかがでしたでしょうか。
リクエストありがとうございました！

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