riverside days

お気に召すまま 03 ページ33

　
　
　
「言う通りにしてって言うから、したのに……」

　そんなこと、普段はよう言わんで、俺。

　……普段は。

　ああ。

　なるほど。

　だからずっと顔隠してるんやな。

「ほんま、Aはやらしいなー」

「違うよ、夢だから！」

「夢って自分の欲望が表れるって言うで？」

「……違うんだってば……」

「そうかー、意地悪な俺がご希望やってんな？」

「やだ……そんな賢志郎、きらい……」

　うわ、嫌いって言われた。

　俺なんもしてないのに。

　それにしても、えぐい夢見てたんやな。

　熱なかったら、その夢、現実にしてるとこやけど。

「ごめん、もう言わんから」

　泣きそうになってるAの額に、自分の額をくっつけた。

「A、熱あんで。せやから変な夢見たんよ」

「熱？」

「うん、熱かったからさっき計った」

「あー……言われてみれば、頭ぼーっとする……」

「やろ？ 薬ある？」

「たぶん……だいぶ前のだけど」

「ほな今日は俺のあげるから、それ飲んで寝とき」

　割と熱が出やすい俺に、薬は欠かせない。

　薬を取ってくると、Aはまだ起きたままだった。

「はい、これ飲んで」

「ありがと……」

「水、ここに置いとくな」

「賢志郎、お母さんみたい」
　
「アンタ熱あるんやから早よ寝とき」

　わざとおかんぽく言って、笑うAを横にならせて布団をかける。

「電気消すで？」

「うん。……熱あるから、わがまま言ってもいい？」

「何？」

「寝るまで、いてくれる？」

「ええよ」

　ベッドの縁に座って、頭を撫でる。

　熱のせいか、すぐに寝息を立て始めた。

　ちょっとだけ眉間に皺が寄ってる。

　しんどいんかな。

　完全に寝たのを確認して、立ち上がる。

「けんしろー……すき……」

　Aの夢、俺の出番多すぎひん？

　こんな寝言聞かされ続けたら、俺が持たんわ。

　頼むから早く元気になってくれ。

「俺も、好きやで」

　起こさないようにそっと頬にキスをして、部屋を出た。
　
　
　
fin.
　
　
　
　

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