riverside days

明日も明後日も 02 ページ4

　洗い終えた髪をヘアクリップで留めて、湯船に浸かる。

　賢志郎も入ってきて、私を自分にもたれさせるように引き寄せた。

　後ろから抱きしめられる。

「……A？」

「なに？」

「めっちゃしたい」

「今？ ここで？」

「今ここで」

　私の了承を待たずに、その手は体を滑りだす。

「えっ、ちょっと、どうしたの？」

　驚いて振り向くと、キスされて舌を絡めとられる。

　いつもの賢志郎はこんなに強引じゃない。

「……ん、待って」

「嫌？」

「そうじゃないけど、いつもと違うから……」

　そう言うと、急に手を止めて、ぎゅっと抱きしめ直してくれた。

「ごめん、Aがずっと俺とおってくれるんやって思ったら、嬉しくて……」

「あ、さっきの話？ 当たり前じゃない」
　
「……そんなすごいこと、さらっと言わんといて」

　珍しく、賢志郎の顔が赤い。

「おじいちゃんになっても、一緒にいるからね」

「そんなん、もうプロポーズやん……」

　何故か急に照れ出した賢志郎に、のぼせるよ、と言って先に上がった。

　体を拭いて着替えながら、確かにさらっと言い過ぎたかもしれない。とは思った。

　35歳過ぎて付き合い出した私たち。

　すぐに結婚しなかったのは、二人とも仕事人間だったから。

　あと、賢志郎に結婚願望がないんだろうなってことが、一緒に暮らしてみてわかった。

　恐ろしいほど自分の世界、自分の生活ができあがってる。

　長い時間かけて培われたそれを、誰かのために崩すような男じゃないってこと、今ならわかる。

　だから一応二人で住んではいるけど、個々の居室があるし、基本はそれぞれの部屋のベッドで寝る。

　仕事が終わって賢志郎が飲みに行かない日に、帰ってきて一緒にお酒を飲むくらいしかしてない。

　というか、一緒に住んでやっと、そのほんの数時間を分けてもらえてる。そんな感じ。

　今日は午後から仕事だというので、珍しくお風呂に一緒に入ってみたけど。

　髪の毛の話から、なんか、飛躍しちゃったな。

　髪を拭きながらソファーに座る。

　お腹空いたなあ、と思いながら朝の情報番組を眺める。

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