riverside days

いつも隣に 04 ページ23

　
　
　
　30分もかからず、瑠実はやってきた。

「お待たせしました」

　緊張してるのか、敬語になっとる。

　濱家とゆずるやで。そんな気遣うことないんよ。

「早かったやん」

　なるべく家にいるときに近い笑顔を浮かべると、やっと安心したように笑った。

「Aちゃん、ゆずるに会うの初めて？」

　濱家も、Aに声をかける。

「……そうなんです。河井さん、初めまして。AAです」

「河井ゆずるです。急に来てもうて、すいません」

「いえ全然。河井さんにお会いできるなんて、嬉しいです」

　さっきとは違う、よそいきの笑顔。

　仕事スイッチ入ったな。

　自己紹介し合ったところで、こっち座り、と隣の席へ促した。
　
「Aちゃん、何飲む？」

「じゃあ、スプリッツァーを」

　すぐにワインベースのカクテルが運ばれてきて、改めて乾杯する。

「なんで濱家とそんな仲ええの？」

　濱がAちゃん、って呼んでるのに気づいたからか、ゆずるが聞く。

　たぶん濱は、Aの苗字を知らないだけやけどな。

「だから、会うたことあるんやて。なあ」

「……その節は、ご迷惑おかけしました」

　いつだったか、酔っ払って帰れなくなった俺を、濱が送ってくれた。

　それはありがたかったんやけど、そのときにAと会ってもうたんよな。

「全然全然。おもろい賢ちゃんも見れたし」

「俺おもろかったん？」

「あれはおもろいで。ずっとAーって言うてた」

「……えー、何それ……」

　むっちゃ恥ずかしいやん。俺何してん。

「賢志郎、かなり酔ってたもんね」

「そっか、賢ちゃん送ってったらAさんに会えるんやな」

　ゆずるは、初対面のAを名前で呼ばなかった。そういう距離の取り方がブレないとこがゆずるよな。

「ゆずるにだけは頼まんわ」

「何でー。俺も賢ちゃんち行きたいやん」

「今はっきりAに会うのが目的やったやろ」

「やってめっちゃ大人でええ人やん」

「ゆずるも早く彼女見つけななあ」

「俺はええねん、別に」

　相変わらず、そのへんのことは何も言わん。

　俺もやけど。

　別にゆずるがそういう話してくるんやったら聞くけど、そんな機会わざわざ作るもんでもないし、今までちゃんと聞いたことはない。

「河井さん、彼女いないんですか？」

　Aが驚いたように聞く。

　まあ、普通はいると思うよな。

「そうやねん。Aちゃんの知り合いでええ子おらん？」
　
　
　
　

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