riverside days

痕跡 01 ページ18

　
　
「あー、いい天気……」

　カーテンを開けて、伸びをする。

　土曜日は、寝坊できるからいいなぁ。

　時計を見るともうすぐ8:30。急いでリビングのテレビをつける。

　キッチンでパンとハムとチーズをホットサンドメーカーに適当にセットして、コーヒーを入れる。

『今日紹介する絶品お取り寄せ、一品目はこちらでーす』

　テレビからはとってもよく知った声が聞こえる。

『これは、出汁が効いてますねー。おいしんじ！』

『出ましたー』

　よかった、賢志郎、調子良さそう。

　最近はこの土曜朝の番組に出てるから、金曜からいないことが多い。

　東京と大阪が大した距離じゃないのはわかってるんだけど、行き来が多いと忙しすぎて倒れてたりしないか、心配になってしまう。

　でもこうして生放送に出てると、今元気ってわかるからいいかもな。

　できあがったホットサンドをリビングで食べる。

　食べ終えると、置きっぱなしだったスマホにLINEが届いてるのに気づいた。

川西賢志郎Aごめん、青いシャツ洗っといてほしい。部屋に出してあるやつ

　送信時刻は今朝の6:00。何かの拍子に思い出したのかな。

　賢志郎の部屋に入ると、金曜に急いで準備して出て行ったらしい形跡がそのままだった。

　ベッドに無造作に放られたシャツは、青3枚、白2枚、黒1枚。……青全部洗っとけばいいか。

　洗濯機にシャツだけを入れてスイッチを入れる。

　普段は自分の分は自分で洗濯することにしてるけど、頼まれればもちろんやる。

　シャツを特別丁寧に洗濯してることは、知ってる。

　そうして、と言われたわけじゃないけど、商売道具のひとつなんだから、同じように丁寧に扱うくらいは当然する。

　30分くらいして、洗い終わったシャツを干す。

　洗った中で、明日はこれを着るんだろうなって1枚が、何となくわかる。

　もうすぐ生放送は終了。

　エンディングまでちゃんと見て、終わると同時にLINEを送信した。

A 生放送おつかれさま。シャツ洗っといたよ。
　既読が付くのを待たずに、出かける支度を始める。

　週末は、だいたい一人。

　でもこの部屋には、賢志郎の生活の痕跡が、たくさんある。

　それに気づいたら、寂しいとは思わなくなった。


川西賢志郎ありがとう。今日は帰れるか微妙やわ。明日になるかも。

　出かけている最中にそんな返信が来ていたから、何冊も本を買って帰宅した。
　
　
　
　
　

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