ファイトソング【Yuta.K】

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「A！Aって！！」




考え事に耽っていたところに名前を呼ばれて、ハッ！と顔を上げる。




「本命の彼氏できてないなら来ればいいじゃん。
今日の相手、◯◯物産だよ！」




老舗の上場企業。
エネルギー系の新規事業が好調で、景気もいいって噂のトコだ。
婚活パーティーなら女側にかなりの会費がかるパターン。飲み会自体は数あれど、なかなかこんな相手とのチャンスは無い。





『…うん、行く！』





優太には、連絡入れておけばいっか。




慌てて作った笑顔で待ち合わせ場所と行き先を聞いて、久しぶりの戦いに備えて気持ちを作る。




けどなぜか、前ほど胸が弾むことは無かった。



なんでだろう。
せっかくのチャンスなのに。




首を傾げながらも、コツコツとヒールを鳴らして廊下から秘書室へと戻る。



優太へは、［代々木上原で飲んで帰る。鍵持って無いから、私が帰るまで何時まででも起きててね！］とだけ連絡した。



既読にはなったけど、返事は無し。



…やっぱ生意気。



溜息をつきながら、



あの無愛想な幼馴染も、私じゃなくて愛しい彼女にだったら、

柔らかく笑いかけたり
優しく抱きしめたり
甘い言葉を囁いたりするのかな…なんて、



つい、そんなどーでもいいことを考えてしまった。




けれど、なぜか余計に気分は下降して行くばかり。





…何コレ。





私に、そういうことをしてくれる人がいないのがいけないのかな。




そうだ。
うん、きっとそう。





だから今日、そんな相手を見つければいいのだ。




ちっともしっくり来ない結論に無理矢理納得しながらも、パソコンに並ぶ文字列に目を通す。




終業までは、あと3時間。




今日は何時に家に帰れるのかな、なんて




無意識に優太の反応を気にしてる自分には、気づかないフリをした。

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