18 ページ18
.
岸「あー…ごめん、なんか今日、俺足引っ張っちゃったよね。」
珍しく元気のない岸さんの声に、慌てて「そんなこと無いですよ！」と明るい笑顔を作る。
取引先での、2人1組のプレゼン。
いつもは勢いと情熱で相手方を圧倒するようなスタイルの岸さんが、今日に限っては借りて来た猫のように大人しかった。
曖昧に微笑みながら定型っぽい説明をする岸さんに驚いて、向こうの担当者さんさえ「体調が優れないのでは？」と心配してくれたほどだ。
もちろん後輩としてフォローはしたし、失態と言われるようなミスがあったわけではない。
けれど失言だらけのいつもの岸さんのプレゼンよりも、今日の方がよっぽど空気は淀んでいた。
『…でもあの、ホントに具合悪くないんですか？
今日はもうこの時間なんで、直帰でいいんですよね。タクシー拾って、近くまでお送りしますか？』
「ははっ！後輩にそんな気ぃ遣わせちゃうなんて、俺、先輩失格だよなぁー…」
うわぁ…ドツボ。
「凹んだ岸さん」と言う生き物と接するのが初なので、どう扱ったらいいのか分からない…。
あ、そうだ。
岸さんの彼女のあの人。
会社に電話して彼女さんに代わってもらって、もしもう帰るところなら迎えに来てもらったらどうだろ？「具合が悪そうなんですけど」って。
出しゃばり過ぎの、お節介かなぁ。
けど私がこのまま放置して帰って、フラフラ歩いてた岸さんが車にぶつかったりして、車の方が壊れちゃったりしたらなぁ…
迷いながらスマホの画面をチラチラ見ていた私に向かって、半笑いの岸さんが小さく呟く。
岸「…実はさ…彼女と別れたんだよね、昨日。
それでちょっとモヤモヤしちゃってて…。けどダメだよな、プライベートな悩みが仕事中の顔に出ちゃうなんてさ。
反省反省！ごめん、迷惑かけて！
だからホントに具合悪いんじゃねーからさ！心配はしないでマジで！」
急に大きくなった声。
けど目の前の岸さんは、「元気」とは程遠い表情をしていた。
ほぼ衝動的に、スーツに包まれた腕をガシッ！っと掴む。
ちょっと驚いたように目を見開きながら、私がぶら下がった左腕を見下ろしている岸さんに、勢いよく声をかけた。
『…飲みに行きましょう！！』
岸「え？」
『飲みに！！行きましょう！！
こういう時は誰かと話すのが1番です！！酒に甘えましょう！！こんな時ぐらい、奢りますから！！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2851人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きのこ(プロフ) - もちさん» 初めまして！コメントありがとうございます(^^)めっちゃピンポイント！！（笑）このセリフの回を更新する前から「え？私に試乗？」「いや、紫耀くんに乗りた（自主規制）」とツッコまれまくってましたww気に入ってもらえて嬉しいです！ (2020年12月4日 1時) (
レス) id: 0a6f63d686 (このIDを非表示/違反報告)
もち(プロフ) - 初めまして！紫耀さんのある意味試乗…が最高でした(^^) (2020年12月4日 1時) (レス) id: 2cca891851 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - もさん» ありがとうございます！！暴れてもらえたなんて嬉しいですヽ(´▽｀)/「キュンが無い」でお馴染みアーンド平野紫耀書けない芸人のあたす、頑張りました！（当社比）楽しんで頂けてよかったです！！ (2020年12月3日 8時) (レス) id: 0a6f63d686 (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - 一気読みさせて頂きました！紫耀くんの 俺の？ でもう心臓がギュンギュンして思わず暴れました。。。最高に面白かったです！ (2020年12月3日 0時) (レス) id: 9653ca93fc (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - butterpig4129さん» え！まさかのしょうかい、あーんど智くん！！知らなかったぁ！！独自の世界の住人がお好きなんですね（笑）私も3人とも大好きです〜☆ (2020年12月1日 17時) (レス) id: 0a6f63d686 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きのこ
| 作成日時：2020年11月6日 21時
