5 side...KAITO ページ6
『ッッッ痛ぁッ……！！』
紫「……へったくそ。
あんま騒ぐと、海人起きるで？」
.
Aちゃんは、きっと紫耀に頼んだんだ。
「戻って来て」って。
「出て行けって言わないで」
「私と海人を助けて」って。
きっと
自分から。
そしてその代償として
他でもない、自分を差し出してる。
周りの景色が一気に色を失い、身体中の血が真っ白に凍りつく。
Aちゃんだけなら、きっとこんなことしなかった。
大学を辞めて働いたり、バイトと奨学金でやりくりしたり
ギリギリかもしれないけど、1人でなんとかしたんだと思う。
だからきっとこれは、ほとんど全部「俺のため」。
まだ学費のかかる
受験を控えた
無力な子どもである、俺のため。
いや違うな。
「俺のため」ってより、「俺のせい」。
紫耀に注意されたせいか、泣き声はもう聞こえて来なかった。
足音に気をつけながらそっと部屋に戻り、目を開けたまま布団の中で息を殺す。
許せない
助けたい
けど、俺に何ができる？
「やめろ」と怒鳴って部屋に入ったって、俺が紫耀に腕っ節で敵うはずない。
それどころか、それで愛想を尽かされたら
Aちゃん共々、住むところさえ失うかもしれない。
金もない。
家もない。
親もいない。
そんな俺たちが今、紫耀に見捨てられるわけにはいかない。
Aちゃんも、きっとそう考えてる。
知ってたよ。
Aちゃんは、小さい頃からずっと紫耀のこと好きだった。
当たり前だよね。
紫耀は何でも持ってるもん。
俺と違って、いつもしっかり「自分」があって
強くて優しくて
みんなのヒーローだったもん。
あんな形でも、考えようによっては想いが叶ったと言えなくもない。
あぁホラ
また俺だけ一人ぼっち。
けど俺、気づいたんだ。
俺が持ってて、紫耀が持っていないもの。
この世で俺だけが持ってて、他の誰も持っていないもの。
凍りついた血が少しずつ怒りに溶け出し、冷え切った体の中を色付きながら巡り始める。
Aちゃんと分け合ったこの血は
誰にも奪われることは無い。
ただ1人の家族。
だから絶対に、紫耀のものなんかじゃない。
あの扉の向こうで何をされてようと
何をしていようと
絶対に絶対に
他の
誰のものでも無いんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 905人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きのこ(プロフ) - pipi_kpさん» え〜マジですか！？すごい！まだ覚えててくださっただけでも嬉しいです🫰ありがとうございます！このぐらいの短編は珍しいですが、また書きたいな〜！ (2023年1月11日 0時) (
レス) id: 4ab1c623f5 (このIDを非表示/違反報告)
pipi_kp(プロフ) - きのこさんこんばんは。let goが久しぶりに読みたくなってこちらへ来ました。冬になると毎年このジンくんとしょうくんを思い出してます。何度読んでも好きです！ (2023年1月10日 21時) (レス) @page40 id: c4a2b088a0 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - キンシコウさん» いえいえ、あちらでもゆるっとよろしくお願いしまーすヽ(´▽｀)/ (2020年7月25日 18時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
キンシコウ - ありがとうございます！！マシュマロ、了解しました、わざわざありがとうございます。 (2020年7月24日 0時) (レス) id: 89ad9cb972 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - キンシコウさん» どぉぞ〜。鍵垢ですけど、無言での申請で大丈夫でーす！今、ツアーの件でマシュマロ荒れてますけど、気にしないで下さいww (2020年7月23日 23時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きのこ
| 作成日時：2020年7月1日 23時
