Daylight【Ren.N】

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私の育った田舎には、令和なんて時代は無縁だった。




なんなら平成すら来ていないかもしれない。




それぐらい、古い考えを変えられない人間ばかりの町だった。




将来は地元の人間と結婚して、働き者で親思いの評判の良い嫁になる。


それだけが正解で、他の夢なんて聞かれもしない。



相手が役場の人間なら大金星。
その次が地銀で、そのまた次が農協の職員。




あとは小売業か飲食業、農家なんかもあるけど、とにかく第一条件なのはなるべく家の近くで、最悪でも県内であること。




だから親は女の子に東京の大学なんて必要無いって信じて疑わなかった。
進学したければ、せいぜい地元の短大。家政科を出て花嫁修行か、保育科を出て幼稚園の先生。
ちょっと働いたらお見合いで結婚して、子どもを産んで同居する。



それが幸せ。
それだけが幸せ。



親世代は、頑なにそう信じ込んでいた。



だから家事は子供の頃から日常的に教え込まれたし、地元のお祭りや子供会なんかにも積極的に関わって来た。



別に、それが嫌だったわけじゃない。



家族やその街が嫌いで、反抗したくて東京へ出てきた訳じゃない。




私は勉強が好きだった。
もっと学びたいことがあった。


そしてそれは、たまたま家政でも保育でもなかった。



学校の成績は良かったから、先生も進学を勧めてくれた。




担任や学年主任なんかも交えてなんとか親を説得して、4年間だけという約束で進学した先の都会は




とっくの昔に、




様々な時代の影の影へと




私たちの「常識」を、置き去りにしていた。

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