《GW限定》きのこのまかない短編集

1【打上花火 / Ren.N】 ページ30

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「大阪行っても、夏祭りの日だけは絶対戻って来る！！そんでみんなと花火見るから！！！」





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中学1年生の冬、廉は引っ越しを前にしてそう言った。




産まれた時から同じ大規模マンションに住んでいた、6人の同級生。



幼稚園も小学校も一緒。
たまに小さないざこざはあるものの、それでもずっと仲良くつるんで来た。



海が近いってだけの、これと言った名所や名物も無い田舎だけど、毎年夏に催される花火大会だけはなかなか豪華で




小さい頃は親も一緒に



小学校3年生からは、毎年必ず6人で見に来ていた。




お父さんの仕事の関係で廉が大阪に引っ越すことになった時はとても悲しかったけど



その次の夏、彼は約束通りここへ戻って来た。




「夏休みやし、まだこっちに従兄弟んちあるから、そこ泊めてもらうことんなってんねん！」




まだ引っ越して1年足らずの廉がすっかり大阪弁になっていたことには驚いたけど

それよりも、いきなり伸びた身長に驚いてしまった。



相変わらずヒョロヒョロで地黒のゴボウ体型だけど、それでもなんだかちょっと見ない間に急に男の子になってしまっていたことに、なぜか言葉にできないショックを受けた。




今まで13年も一緒にいた廉が



違う場所で、違う誰かになってしまったような気がした。






それでもやっぱりいつも通りのメンバーが揃った安心感は私の心を満たし、かき氷やりんご飴を食べながら花火を見て


夜にはいったんバイバイするものの、次の日も6人で集まってゲームしたり海で遊んだり



みんなでいればなんだかんだで昔の空気感に戻れると言う事実が、私は単純に嬉しかった。





その次の年も、廉はちゃんと戻って来た。




更に伸びた身長。
ほんの少し大人っぽくなった顔つき。



中学3年生になった廉は、嘘のようにカッコよくなっていた。



6人で行った夏祭りでも、たくさんの女の子に振り返られていた。





まぁこっちにいた時もクラスの中では人気がある方だっけど、大阪でもきっとモテるんだろうなぁ…





勝手に可愛い彼女と歩く廉を想像して1人で凹んでいた私に、5人は気づかなかった。





そして去年と同じような夏が終わり




秋が来て冬を越し





私たちは





バラバラの高校へと進学した。

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