《GW限定》きのこのまかない短編集

16 ページ22

学校にして行くよりは…と言うことで、急遽ジンが我が家へ来ることになった。




親以外の人間を招くのは初めてだ。



オタクの友達は基本的にはネット上にしかおらず、周りには「なんとなく暗いヤツ」程度の認識しかされてないだろう。



まさか初の来客が、あの「神宮寺勇太」だとは…



高校時代の自分に伝えても、鼻で笑われて終わるだろうな…




神「お邪魔しまーす。」




代わり映えのしない部屋が、途端に華やかに彩られる。



きちんと靴を揃えて上がってきたジンは、意外そうな顔で部屋の中を見渡した。





神「…思ってたのと違ったかも。」




『？？どんな部屋だと思ってたの？？』




神「なんか…アニメのポスターとかフィギュアとかキャラ付き抱き枕とか、そっち系のグッズが部屋中にバンバンあるのかと思ってた…」





『…親には趣味のこと、隠してるから。
たまに合鍵使ってアポ無しで突撃してくるから、気が抜けないの。』





神「うわっ、ホントにいるんだ、そーゆー親！」




軽い調子で笑うジンにコーヒーを出して、ちょっと緊張しながらローテーブルに向かって正座する。



二つ折りの鏡を立てかけ、少しずつ揃えた化粧品を入れたメイクボックスを広げると


おそるおそる手を動かし、自分の顔を作り上げて行った。




ジンは私のメイク中に話しかけて来ることも、こっちを見ることもなかった。



私がそういうのを嫌がるということを、自然と分かってくれているのかもしれない。




そのおかげで途中からはそれなりに集中できた私は、20分程度で全工程を無事にやり遂げた。





『…終わった。』




神「俺、見てもいい？」




『うん…』




とても正面は向けず、正座して俯いたままの私。




ジンは何も言わず



少ししてから





「…もうブスって言えねーじゃん。」





と、




歌うように、軽やかに笑った。

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す