12 ページ12
さきほどよりも、気持ち速いスピードで走っていく高級車。
夜の街並みが走馬灯のように流れて行く。
平野さんは笑顔を浮かべたままだったけど、なぜかさっきと違って、全く口を開かなかった。
気にならないでは無かったけど、よく知らない人に運転中にアレコレ話しかけるのも気が引ける。
大人しく窓の外を流れる景色を眺めていたら、しばらく経ってからの信号待ちで、やっとハスキーな声が聞こえて来た。
紫「…結局、あんまAちゃんのこと聞けんかったわぁ。」
笑顔のまま凛々しい眉を下げる平野さん。
視線は相変わらず正面のままだ。
『あはは、確かにせっかくお家にまでお邪魔させてもらったのに、ただの世間話ばっかりでしたね…。』
紫「俺さ？今まで何回も廉に聞いたんやで？」
『へ？』
紫「Aちゃんのこと。
どんな子なん？趣味とかあんの？好みのタイプは？写真無いの？って、何回も聞いた。
けどアイツ、全然教えてくれへんねん。」
『……………。』
紫「なんでやと思う？」
『え…………』
なんでか…って、
そんなこと私に聞かれてもな……
『…面倒くさかったんじゃないですか……
あんな性格だし。』
なんとなく思いついた答えを口に出したら、平野さんが呆れたように「ははっ」と軽く笑った。
紫「一応言うとくけど。」
『…はい？』
急に変わったらしい話題に頭が「？」が浮かぶ。やっぱりさっき林田さんが言っていた通り、ちょっと変わり者ではあるみたいだ。
紫「�犁�婚″なんて言うても、実際のところはただの占いや。明日の天気なんやろな〜って靴飛ばすのと、何ら変わらん。当たり前やけど、法的拘束力なんてモンも無い。だから…」
口を結んだまま、目を細めて歌うように話す平野さん。
なぜかその横顔から、魔法のように目が離せない。
紫「選ぶのは、あくまでAちゃんやで。
俺はもう、昔から許婚に会えるのを楽しみにしてたから抵抗なんて全然無いけど、突然聞かされたらそうもいかんやろ？
一生のことやし、ちゃんと普通の結婚と同じように、色んなこと考えてから決めてくれてええよ。分かんないこととか、不安なことがあったら何でも聞いてくれてええからな！」
平野さんが、満開の薔薇の花のような笑顔をこちらへ向ける。
壮麗で誇り高く、それでいてスルリとこちらの懐へ入り込んで来るような
苦しくなるほどの、甘い香り。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1509人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きのこ(プロフ) - りなさん» 面白いから残しておきますwwww (2020年3月25日 1時) (
レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
りな - コメントする場所間違えてました(有り得ない)消すかスルーでお願いします、、、穴掘って帰りたい、、、() (2020年3月25日 1時) (レス) id: ba24aa010a (このIDを非表示/違反報告)
りな - うわああ！！カイちゃん最低すぎる！！なんて残酷な！！顔が良いからって畜生！！って思って読み進めてるうちに、まんまときのこワールドのかいちゃんに堕ちてました。アーメン。 (2020年3月25日 1時) (レス) id: ba24aa010a (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ゆり:)さん» いつも褒めてくれるゆりさんらぶ！！私も最初書き始めたときはこんな流れになるとは思っでませんでしたwwさり気ない間なんかは頭の中で映像化したものを言語化してます！勝手にドラマ化！同じ映像が見えてたら嬉しいなヽ(´▽｀)/ (2020年3月24日 10時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり:)(プロフ) - ツッコミ(ミカコちゃんのツッコミ大好き)や紫耀くんの天然さにクスクス笑ってたのに、一瞬にして深い深い魅惑の波に飲まれてしまうこのギャップ。紫耀くんのさりげない遮りや一瞬の沈黙に隠された廉くんにも惹かれる主人公への切ない想い。あぁ、名作。天才です。らぶ！ (2020年3月24日 0時) (レス) id: 3ddef168f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きのこ
| 作成日時：2020年3月2日 22時
