P・A・R・A・D・O・X【SHO】

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『自分で追い払ってたらしいじゃん。』




くたびれたコタツの上。



今日もまた腕まくりしたワイシャツ姿の紫耀くんが、馴染みのノートパソコンから視線を上げてキョトンとした顔で私のことを見ている。




『この前、駅前で。
女の子に勝手に写真撮られそうになって、自分で追い払ってたんでしょ？』




紫「…見とったん？」




『岸先輩がね。』




「岸先輩かぁ…」と、掠れた声で苦笑いを漏らす紫耀くん。




『自分で言えるなら、普段も自分で言ってよね！』




コタツテーブルの上に顔だけ載せてブスッと不貞腐れる私を見て、紫耀くんが「ぷっ」と噴き出した。





『何で笑うの！』





紫「あはは！いや、別にぃ！
ごめーん、だってぇ…守ってもらうの、嬉しかったんやもん！！」




つまみ食いが見つかった子どものように、えへへ…と可愛らしく笑っている。




『何それ！男の子でしょ！！』





プンスカと怒る私を見て、紫耀くんはまたしても楽しそうな笑い声を上げた。





…何が面白いのか、全然分かんない。



まぁ、紫耀くんは基本的にいつもニコニコしているんだけども。



天才肌の変わり者である彼の考えていることは、やっぱりいまいちよくわからない。




でもやっぱり、岸先輩に言われたように警戒する気持ちにはならなかった。






ブブブブブ…





『ふぎゃっ！！』




突然、私の頭が載ったままのコタツのテーブルが細かく振動して、驚いて舌を噛んでしまった。





『…〜〜〜！！！』




紫「え″ッ！？まさか舌噛んだん！？
だぁ〜いじょぶぅ！？！？」




紫耀くんが慌てて私の頬に手を当て、節の目立つ親指で唇をなぞる。




『ヒィッ！！！
らいじょーぶ！！らいじょーぶだかや！！』




紫「言えてへんやん…」




「あはは…」と誤魔化しながら逃げるように電話に出ると、相手は妹だった。

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