SHE! HER! HER! 【REN】

おまけのおまけ side...KAITO ページ44

「海人、お待たせ！」




暖かい日差しが差し込むテラス席。



太陽に照らされた街路樹がキラキラと光り

その色とりどりの結晶が、目を閉じても目蓋の裏でチラチラと瞬いている。



そんな小さな幸せを堪能している俺のところへ、どこかで聞いたような声が横入りして来た。




ゆっくりと目を開けて、声の方へと顔を向ける。




海「別に待ってないよ！」



「ならよかった！
あはは、寝てたの？テラス席なのに！」




寝てたワケねーじゃん。
情緒のカケラも無い女。



ま、いっけど。
そんなの最初から分かってたし。



大学生っつってたっけ？
あれ？職場のアルバイトの子だっけ？



…ま、いっか。この際、誰でも。





「ねぇねぇ、今日楽しみだね！！
海人が好きなアーティストが来日するって聞いて、めっちゃ頑張ってチケット取ったんだよ！？」




海「ふふ…ありがと！すっごく楽しみ！」






蝋燭の火のように、揺らめく記憶を引っ張り出す。


去年のクリスマス。
そのアーティストの曲で踊った夜。


モノレールの窓から見えた、水面に揺れる色とりどりの光。


ちょうど、さっき俺の目蓋の裏に映っていたような。




踊るのは大好き。
音楽に体を乗っ取られてるような気分になって、なんだか自分が操り人形になったみたい。



非現実的で、夢の中にいるような錯覚に浸れるから、子どもの頃から病みつきだった。




だから、「誰かのため」に踊ったのなんて
あの時が初めて。




なんだか俺じゃないみたい。




あれはあれで、悪くない感覚だったな。

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