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あまりの待ち時間にいくつかの脱落組が出たせいもあり、思ったより早く順番が来た。
海人と2人、狭くて丸っこい個室へと乗り込む。
深呼吸のようにゆっくりと巡る外の夜景は
まるで、水槽の中で見る夢のようだった。
ぼーっと外を眺める私に、海人が優しく話しかける。
海「俺ね、気付いてたよ?
前にAさんの家にナガセが来てた時…なんとなくだけど。
俺といる時よりもちょっとだけ緊張してる顔見て、あぁそっかって。
この2人、多分この先どーにかなっちゃうんだろうなぁ…って。」
その頃はそんなつもりは無かった…と言おうとして、ふと思い出す。
わざと永瀬に「妹を送って」と言った、あの時。
もしかしたら、私は彼を試したのかも知れない。
「2人きりで帰っても、あの子を好きにならないで」
「犹笋茲蠅睨紊里良い″なんて言わずに、変わらず私に笑いかけて」
心のどこかで、そんな風に思っていたような気がする。
海「でもね、俺…それならそれでいいかなーって思ったの。恋愛のスイッチ入ったことを、まずは喜んであげるべきだなって。
上手く言えないけど…やっぱりAさんが好きになった人じゃなくちゃ、意味無いじゃん?」
海人の肝心なことは言わない、なのに飾らないココロをさらけ出すような言葉が、弱くて不器用な私を少しずつ溶かして行く。
Aさんが好きになった人″
そうか。
私は、
永瀬のことが好きなのか。
海「だから、それ自体は猯匹ったね″って言ってあげられるんだけど…
きっとまだ怖いんじゃないかな…って心配してる。
長年オフだった恋愛センサー、いきなり入れるの…怖いんじゃないかなって。」
正直、その通りだった。
妹のことはさておき、自分が恋愛に不向きであることは自覚している。
好きになったからって、そう簡単に新たな扉に飛び込む勇気なんて無い。
特に、相手が相手だ。
異性として意識していなかった時は普通に仲良くしていたつもりだったが、
「恋愛対象」として見た途端にハードルは一気に跳ね上がる。
「難攻不落の爆モテイケメン」
私みたいな初心者に、どうにかなる相手じゃない。
いつかのクラブで、綺麗な女の子に囲まれていた永瀬を思い出す。
思わずしょんぼりと項垂れそうになった私の頭を、海人が長い両腕で
ふんわりと包み込んだ。
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きのこ(プロフ) - ゆり:)さん» 気づくのが遅くなりました!さーせん!通知来てねぇぞ?(怒)おかわりしはは、ありがとうございます!白米は旅館で出るので、そのあとに布団の中でもっといいもの与えてあげて(自主規制) (2020年10月14日 11時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり:)(プロフ) - 久しぶりのしはは。感無量。良い子で平らげる廉さんに白米たくさん与えたい。ありがとうございました! (2020年10月5日 3時) (レス) id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ななかわさん» わーありがとうございます!微妙にノリの軽いチャラ廉は私もお気に入りですww好きになってもらえて嬉しいですヽ(´▽`)/たまーに質問頂くんですが、書いてる時は別にキュンともギュンともしませんww淡々としたもんで、全然潤わないですww (2020年4月16日 16時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
ななかわ(プロフ) - きのこさんの作品でこちらが一番好きです。終始ドヤ顔風で、得意げにぜったい俺に惚れた!って思うれんくんを想像したらめちゃくちゃかわいかったのに、まさか真顔( ˙-˙ )で書いてらしたなんて……笑 (2020年4月16日 10時) (レス) id: fe68b6cd78 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - みずほさん» いえいえ、お話はお暇なときに読んでもらえれば十分ですよ!Black Jokeもハマってもらえて嬉しいです(^^)つい先日無事に完結しましたので、また思い出した時にでも覗いてもらえれば嬉しいです! (2020年4月16日 0時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのこ | 作成日時:2020年1月16日 23時