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帰りに「顔だけ出してって言われてたんだ!ごめん!」と海人が寄ったのは、海の近くのおしゃれなクラブだった。
…クラブかぁ。
あんまりいい思い出無いなぁ…てゆーかまぁ、ピンポイントな思い出しかないんだけど。
店は違うものの、あの時と同じように熱気と爆音で満ちた店内。人の波間を縫って進み、海人が慣れた様子でDJブースを覗き込む。
海「ごめんごめん、今日は本命だからすぐ帰らなくちゃなんだ!また今度、ゆっくり来るね。」
「んじゃ1曲だけ踊ってよ!
お前の好きなのかけるからさ!!」
ノリが良く大人っぽい雰囲気のイントロが流れてくる。海人が大きな目をパチパチさせて天井のミラーを眺める。
海「う〜〜〜ん……コレかぁ…
……じゃあ、一曲だけ。
Aさん、見ててくれる?」
海人が脱いだ上着を私に渡して来た。
え?
クラブって音楽に合わせてなんかユラユラするだけじゃないの?
人混みに消えそうになる背中を必死で追いかける。
海人はフロアの中でも一段高くなっているステージのような場所へまっすぐに進み、「よいしょっ」と軽い調子で飛び乗った。
『…ここで踊るの?』
ポケットに手を入れたままの海人が低い位置から見上げる私のことを振り返り、にっこりと笑った。
けれどすぐに真顔になったかと思うと、細めた目でスゥッと息を吸い
音楽に合わせて、大きく体を動かし始めた。
長い手足が伸び伸びと舞う。
周りの視線が、みるみる海人に吸い込まれて行く。
その人並外れたキレとスピードは、素人の私にも痛いほどに伝わる迫力に満ちていた。
流れるように、跳ねるように舞う体。
繊細なのに、力強い。
踊る海人はまるで別人のようで
呆気に取られていたら、聞いたこともない英語の一曲は、あっという間に終わってしまった。
ぼんやりと濁った空気に煌くステージライトが
やっぱり私には、夢の中の景色に見えた。
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きのこ(プロフ) - ゆり:)さん» 気づくのが遅くなりました!さーせん!通知来てねぇぞ?(怒)おかわりしはは、ありがとうございます!白米は旅館で出るので、そのあとに布団の中でもっといいもの与えてあげて(自主規制) (2020年10月14日 11時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり:)(プロフ) - 久しぶりのしはは。感無量。良い子で平らげる廉さんに白米たくさん与えたい。ありがとうございました! (2020年10月5日 3時) (レス) id: 4c9de357d4 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - ななかわさん» わーありがとうございます!微妙にノリの軽いチャラ廉は私もお気に入りですww好きになってもらえて嬉しいですヽ(´▽`)/たまーに質問頂くんですが、書いてる時は別にキュンともギュンともしませんww淡々としたもんで、全然潤わないですww (2020年4月16日 16時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
ななかわ(プロフ) - きのこさんの作品でこちらが一番好きです。終始ドヤ顔風で、得意げにぜったい俺に惚れた!って思うれんくんを想像したらめちゃくちゃかわいかったのに、まさか真顔( ˙-˙ )で書いてらしたなんて……笑 (2020年4月16日 10時) (レス) id: fe68b6cd78 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - みずほさん» いえいえ、お話はお暇なときに読んでもらえれば十分ですよ!Black Jokeもハマってもらえて嬉しいです(^^)つい先日無事に完結しましたので、また思い出した時にでも覗いてもらえれば嬉しいです! (2020年4月16日 0時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのこ | 作成日時:2020年1月16日 23時