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「痛ッッ…う″ーーー…」
週明け。
永瀬くんの伸び伸びサロン湿布を分けてもらったものの、そんなもんでは誤魔化せないほど腰が痛い…
てゆーか、全身痛い。
いい歳こいて、調子に乗り過ぎた…
「金曜日休んだのって、ギックリ腰だったの？」
首を傾げるジンくんに曖昧な微笑みを返し、なんとかパソコンに向かって指を動かし始める。
まだ家で寝てるんであろう永瀬くんにほんの少しイライラしながら午前中を終えようとした、その時…
ガヤガヤガヤガヤ…
フロアの入り口あたりがザワついている。
受付からの内線は来ていないから、身内の来客だろうか。
抜き打ちで、お偉いさんの視察でも来たとか？
しかし、興味本位で人だかりの方へ顔を向けた私の目に飛び込んで来たのは、まったく予想外の人物だった。
「A。」
私の目と口が、漫画みたいにまん丸になる。
「久しぶりに帰国したら、俺の部屋に素っ裸のコイツが寝てたんだけど。」
「さ、智くん！！！！」
「だから、素っ裸ちゃいますって！！！
パンツ穿いてたもん！！！ギリセーフっすわ！！！」
ノーネクタイのワイシャツにダウンジャケットを羽織った智くんと、その後ろには、なんだか無理矢理引っ張られて来たような永瀬くん…
「え、永瀬？
けど大野さんの実家って、今確か…」
ジンくんの呟きに、フロア中のみんなの視線が私へと集まる。
……これは……
どう考えても言い逃れできない……かもしれない……
「え、永瀬って、Aさんのアシスタントの？」
「あの2人、一緒に住んでるってこと？」
「けどアイツ確か、まだ学生だったんじゃ…」
ザワザワと様々な憶測が飛び交う。
言葉を失ったまま立ち尽くしていたら、人混みの中から誰かがスッと前へ出るのが見えた。
「え、優太…」
2人の前に立ちはだかった優太は、なぜか驚いたような顔で永瀬くんのことを眺めている。
「あのー…間違ってたらさーせん。」
「え、俺っすか？」
首から下げられた社員証の中に「岸 優太」の文字を見つけ、途端に戸惑った顔になる永瀬くん。
けど優太はそんな永瀬くんの目をジーッと見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。
「キミさ、夏に失踪して行方知れずになってた、関西支社の永瀬部長の息子さんじゃない？」
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作者名：きのこ
| 作成日時：2023年8月21日 1時
