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「じゃあ、本気でもいい…」
「…ケッコンして寿退社は？」
「そんなの、もういい。仕事も頑張る。だから、出て行かないで…」
私に巻き付く腕の力が、ギュッと強くなる。
何も持っていないからこそ、自由な両手。
どんなときも躊躇わずに私を受け入れてくれて、落ち込んだ日も軽い口調で笑わせてくれる。
私はもう、永瀬くんがいないと何も頑張れない。
前よりももっと、使えない女になってしまったのだ。
�狢膸�にして″と言ったはずなのに、永瀬くんは耐えかねたように部屋のソファに私を押し付けると、そのまま有無を言わさず私の体を貪り始めた。全身に舌を這わせる合間に無数のキスが落とされ、細い指先が翻弄するように体中の隙間を滑る。
酒に酔って寝たあの日も、彼はこんな風に余念なく私を抱いたのだろうか。
いや、きっと違う。
朧げな記憶しか無いけれど、あの時はもっと本能的で、欲望に忠実だった気がする。
今日はもっと、激しさの中にも切なさのようなものが見え隠れしていて、ただ勢いだけではなく、この時間を慈しむような余裕の無い眼差しを向けられているような気がして
もしそれを�牋�情″と呼ぶのなら、私は確かに今、「目の前のこの人に世界で一番大切にされている」のかもしれないと、
やわやわと波打つ意識の中で、そんな風に思った。
その夜は飽きることなく何度も何度も抱き合って、次の日は生まれて初めて仮病を使って会社を休んで、そのまま週末へ入った私たちは、お風呂場やキッチンなど場所を変え体勢を変え、文字通り朝から晩まで1日中ヤリまくった。
お腹が空いて
けどとてもじゃないけど料理なんか出来なくて
ベッドで微睡みながら頼んだ2度目のUber Eats。今度はきちんと2人分。
食べ終わったらさすがに疲れが来て、2人でベッドに潜り込んだときは、もう今が何月何日の何時なのかすら判別できなかった。
泥のようにベッドに沈み込む私に、隣で眠る永瀬くんの無精髭だけが、世界はまだ止まっていないことを教えてくれたような気がした。
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作者名：きのこ
| 作成日時：2023年8月21日 1時
