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俺は奥にある自分の個室にAさんを引っ張って行くと、赤い顔でムニャムニャ言ってるAさんをベッドに座らせた。
なるべく冷静に。
落ち着いて、流されないように。
「Aさん、俺のことわかる？」
「…ながせくん。」
「お、よしよし。あん時よりはマシやな。
まさか今日の今日で来るとは思わんかったから、油断したわ…。」
はぁー…と深く息を吐きながら、運び込んだばかりの机の中から小さな箱を取り出す。
「これ、忘れないうちに渡しとくわ。」
「？？？何コレ？？？」
酔っ払って小さい子みたいに舌っ足らずになってるAさんの前で、パカっと箱を開けてみせる。
「…わぁ、キラキラ！」
引越しや入学金は、結局親に出してもらえた。
だから思い切って、そのために貯めてた分のバイト代はたいて、背伸びして買ったダイヤモンド。
小さい石やけど、オレンジ色の間接照明を受けて、眩しいぐらいに光ってる。
「予約。2年後の。」
「予約？」
「そ。
今度は隙間開かんよう、ちゃんと嵌めといて？
そもそも元カレのおる会社に1人で残るなんて、気が気じゃないしさ。」
驚いた顔のままのAさんの左手を取って、勝手に薬指に差し込む。
サイズが大丈夫そうで、一安心。
「Aさんの欲しいもの、全部与えてあげられる大人んなって来るからさ。
それまで、もーちょっとだけ待っててもらえん？」
「…何を？」
「最初に、1回断られたヤツ。」
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酔いのせいか、焦点の合わない目のまま首を傾げているAさんを見て、思わず苦笑いが漏れる。
分かってんのかなぁ。
けど、大丈夫やで。
俺、嘘とか苦手やから。
どんなに軽い調子でも、ちゃんといつも本気やから。
2年間、信じて待ってて。
そんでそっから先はずーっと死ぬまで、俺だけのAさんでいてよ。
飲むと見境無くなるはずの酒乱の歳上彼女は、今日は小さい子みたいに目を輝かせながら
薬指に光る透き通った石を
いつまでもいつまでも、飽きることなく眺め続けていた。
【END】
お付き合い頂きありがとうございました。
廉くん、ご卒業おめでとうございます(^^)
きのこ
.
終わり
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作者名：きのこ
| 作成日時：2023年8月21日 1時
