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年が明けて、永瀬くんはめでたく大学院に合格した。今後は学校に通いながら、智くんの事務所で見習いバイトをするらしい。
「武者修行」と言う名目だけど、実際は智くんが「親戚なだけあって、俺も英語とか事務作業さっぱりなんだよねー」なんて言ってたから、やっぱり永瀬くんの能力を必要としている人はいるってことなんだろう。
明らかな閃き型の智くんとは、足りない部分を補い合うのにちょうどいいのかもしれない。
とは言え本人は国内から海外までしょっちゅう色んなところを飛び回っているので、実際は日本にある事務所の留守番的な役割になりそう。けど智くんの事務所にはズバ抜けて有能な「松本さん」と言う秘書さんがいるから、本人不在でも学ぶことは多いはず。
そして私は…
「会社、残るらしーじゃん。」
少ない私物をまとめつつ、
「短い間でしたが、お世話んなりました〜ぁ！」と笑顔で挨拶している永瀬くんを遠巻きに眺めていたら、後ろからボソッと話しかけられて、驚いて振り返った。
「二宮さん…！」
「大野さんの会社、ホントはお前も誘われてたんだろ？どうせなら、一緒に移ればよかったじゃん。」
「遅ればせながら仕事も慣れて来ましたし、今の会社の方がお給料良かったんで。」
「んっふふ…あと2年、養わなくちゃいけないんだもんね？」
「永瀬くん、うちからは出て行くことになりました。さすがに今の生活は、親御さんに怒られたそうで。
けど、前にルームシェアしてたお友達が戻って来たんで、また一緒に住むそうですよ。
大学院の入学金も引越し代も実家から出してもらえたみたいで、なんだかんだホッとしてました。」
お友達の方は、倒れたお母さんの容態が落ち着いて、復学できることになったらしい。
春からは、家も職場も別々。
それでも私たちには、明るい未来があるから。
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作者名：きのこ
| 作成日時：2023年8月21日 1時
