ここは「ヘタリア」の世界みたいです。

３５．５　知らない話もあるみたいです、sideギルベルト ページ44

―「私のこと、なんだと思いますか？」―


一週間、雫と過ごしてみてわかったことがある。


自分の意志が、薄い。

喋らないとかそういうわけではなく、何かが無い。

芯は強いように見えるのに…？


菊にだって自分の意志はあるし、通すところはきっちり通すやつだ。

しかし雫の場合は何か違う。


言いたい事が言えない、んじゃなく言いたいこと自体…何がしたいとか、そんな感じのがない、ような。

普通に見えるやつには普通に見えるだろうが、それが違和感として残っていた。


それなら何も起こさないはずだ、とも思っていた。

何か、特に俺様が予想出来ないような何かを起こそうと思うなら、それを起こそうとする意志は必要不可欠だからだ。


それなのに、リズから聞いた話は正反対だった。


俺達の『思い』は雫に何も起きてほしくないということ、そしてあいつらに怪我がないこと。

あいつらは敵だったわけではなく、雫を国にとって危険因子だとみなした上で捕まえるつもりだった。

雫の場合はそんなことも分からないだろうし、ただ怖かったから、自己保身のためにああいう力が使えたのか、そう思っていた。


いや、雫は最初から自分のことなど頭に無かったんだ、な。

じゃなけりゃ、怪我をさせたくない方の思いに反応なんてしねえだろ。


「他の思いに反応して何かを起こす力」


それにどれだけ本人の意志が関わっているかなんてわからねーけど、その代償を顧みずにそういうことをした。


自分だけ、代償ってやつをひっかぶるのに。


ここまでのことをしておいて、今、雫は自分がなんなのか分からねーと最初の、あの時のような声で聞いている。


まだ、自分を信じられてはねーんだろうな。


そりゃ、そうか。

だってこいつにとってここは「異世界」で、自分はよくわからない「能力」を持っている。

その上身柄は世界で預かることになった。


また、怖いと。

そう思ってるんだろ、どーせ。


自分が解らないことが、自分が信じられないことが怖いと。


なら

ここまで師匠師匠と呼ばれ続けた俺様ができることは一つだけ。

可愛い弟子が自分の存在まで問うてくれるんだ、信頼されてるんだろうな、俺様。


俺様のことを師匠って呼んでるってことは、自分で自分は俺様の弟子だと認めてるようなもんなんだぜ？

それだけは疑わなくていい、分かってていいから、


それ以外は、お前がお前のものにしろ！

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