84-3 ページ9
.
Aはまだ若頭“候補”。
年も若く、3代目の実子にもあたらねぇ。
3代目直々に誓いを立ててる組員からすりゃ、命をかけてついていく存在にはなり得なかったんだろう。
「…もしもあの時に戻れンなら……俺ァ…お嬢を認めなかった自分を殴り飛ばしてやりてぇ…ッ」
テツさんがそう拳を振るわせながら言った。
同じように組員たちが顔をうつむける。
そんな様子を見ていた3代目が、ふと自分の刀を持っているギンさんに何か囁いた。
ギンさんが軽く頷いたかと思うと、突然容赦なくテツさんの背中に刀をぶち当てる。
ゴスッ!!
「い゛っ!!?」
悶えるテツさん。
ありゃ…中々な音がしたな…。
…アルさん笑ってるし…。
「馬鹿を言うんじゃァねぇよ。悔いたって過去には戻れねぇのさ。懺悔が済んだなら、とっとと前を向いちまえばいい」
蹲るテツさんを見ながら、そう言って笑う3代目。
「あれだけの手腕を見せられて、まだ次期若頭を認めねぇ奴がいるってのかィ?もしいるなら随分な捻くれ者だぜ」
なぁ?と声をかけた組員たちが肩を跳ねる。
気まずい顔をしながらも、誰一人として否定の言葉は出ない。
(まぁ…)
たった数日で、あの八島組を追い込んだ事実を目の前にして、ダメ出しの一つも浮かばねぇんだろう。
「おう、文句はねェようだな」
3代目が俺達を見る。
ゆっくりと動くその唇が“あとは頼んだぞ”と言われた気がした。
Aを後部座席に乗せて、俺たちも車に乗り込む。
テツさんが気を使ってくれたんだろう…俺の代わりに部下の人が運転を代わってくれた。
千葉に帰る道すがら、車内電話でアルさんたちが俺らの代わりに警察の事情聴取を受けてくれたことを知った。
…何から何まで迷惑かけっぱなしだな。
「着いたぜ」
「ありがとうございました」
「おう、お嬢によろしくな!」
Aを抱き上げて、A家に入る。
手のふさがった俺の代わりに相良がドアを開けて電気をつけた。
掃除する暇もなかったんだろうな…若干埃臭ぇ。
「上に寝かしてくる」
「おう。落とすなよ」
「落とすかよ」
階段上ってなんとか部屋のドアを開けると、Aをベッドにそっと下ろした。
「………………」
顔にかかった髪を避ける。
小さな寝息。
嫌な夢でも見てんのか…ピクリと動いたまつげとうっすら顰めたツラに、俺は起こさないよう気を付けながら頬を撫でる。
「大丈夫だ、傍にいる」
もう独りにゃさせねえ。
二度と喧嘩にも負けねえ。
68人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時