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「お疲れ様です、アルさん!」
「テツ兄貴!」
「お疲れ様です!怪我ねぇっすか」
ふと、アルさんたちに声がけする組員たちの声が聞こえて、俺たちは振り返った。
「おう、オメェらもご苦労だったな」
「いやいや、俺らただテツさんの言うとおりに動いただけッスから」
よくある光景だ。
今回はA組より規模のデカい八島組を制したのもあってか…組員の興奮が大きい。
「しかし流石ギンさんっスねぇ。あれだけの作戦考えるなんて」
「テツ兄さんも、ワザとお嬢と喧嘩してるなら最初から教えてくれりゃよかったのに!」
「あん時は本気で喧嘩してるのかと思ってましたよ」
「カチコミするお嬢にアドバイスされたのはアルさんでしょう?」
「病み上がりだってのに酷使されましたね」
「「「「………………」」」」
3代目とアルさんたちが顔を見合わせる。
変な空気を感じ取ったのか、組員たちが首を傾げた。
すると、テツさんが頭を掻きながら「そうじゃねぇ」と口火を切った。
「今回の事は、全部お嬢が一人でお考えになったことだ」
その言葉に、遠目で見ていた俺と相良も目を見開く。
「俺はあの時、オメェらと同じように本気でお嬢は組長代理にはふさわしくねえと思ったんだ。…分断した後、ギンさん伝手にお嬢が手紙を寄越してくださってな。そこで初めて俺は、自分の部下に八島組のスパイが混じってやがるのを知ったんだ」
「そ、そんな…」
「…マジなんスか…」
「あぁ」
「お嬢は八島組の油断を誘う為に、ワザとテツとぶつかってA組を分断させたんだよ。…内情嗅ぎまわる八島の組員どもに悟られず玖仁会と連携して、冴輝組に加治木組を潰すよう交渉した」
ギンさんが煙草を吸いながら、続きを話す。
「俺が発案者?…いい役どりだな。サポートに回っただけで、お嬢に言われるがまま動いただけだぜ」
「私も、怪我人だからとサポートすら断れた身ですよ」
暇なので勝手に3代目をお連れしましたが、と笑うアルさん。
横で3代目が「暇じゃなきゃ連れていかねぇ気だったのか?」と文句を言ってる。
「智司も猛も居ないA組には、自分を認める人間が一人もいないこと…あの方は一番良くわかっていらしたんです」
いつの間にか、他の組員たちも話を聞いている。
「一人で救おうとしたんですよ。A組を」
組員たちが、言葉を失ったみてぇに静かになった。
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時