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84話


「おい、智司。オメーなにポケッとしてんだ!さっさとお嬢のトコ行かねぇか!」
「!」

テツさんの声が聞こえて、俺はようやく我に返った。
あぶねえ…アイツの言葉聞いた瞬間マジで意識飛んだ。



“二度と人の男に手ェ出すな”



あいつがどんなつもりでそう言ったのかはわからねぇ。
けど、その目に嘘偽りはなかったように思える。

「智司」

また名前を呼ばれた。
目を向けると、伊藤が困ったように俺を手招いてる。
アイツの足元にAが座り込んでいた。



 カメレオン



「俺が触れたら、オメーら怒るだろ」

抱き上げると、小さな寝息。
…寝てんのか。
安堵した俺の元に、三橋が不思議そうに近づいてくる。

「あ?なんだ。Aどうかしたんか??」
「疲れて寝ちまったらしい」
「緊張感ねぇなー」
「まぁ、そう言うなよ。智司らが居なくなって、ずっと気が気じゃなかったんだろ」
「………………」

自分でもわかるほど、眉間に皺が寄った。

「智司?」
「不甲斐ねぇよな」

心の声がそのまま出ちまった。
意外そうに俺を見る三橋と伊藤。
面倒クセェ言葉を投げられる前に、さっさと相良ンとこに向かった。

「おい、相良。帰るぜ」
「…あ?………おう」

振り返った相良が俺の腕の中で眠るAを見る。
今気づいたって顔だな。

「おい、どうした…気ィ失ったンか!?」
「寝てるだけだ」

目をつむるAの顔を見て、相良の動揺が安堵に変わる。

「マジ焦った…」
「俺もだ。まぁ、怪我させたことに変わりはねぇんだろうけどよ」

俺の言葉を聞いて、首に目を向ける相良。
八島華のつけた切り傷に、顔を顰める。

「………ン?」

相良が何か気づいたらしい。
学ランの中のシャツを少しずらすと、打ち身が見えた。
顔を見合わせる。

左腕の裾をあげると、擦り傷と紫に変色した治りかけの傷跡。
右腕には包帯も巻かれてた。
こりゃ…

「襲撃の時の傷か」
「かもしれねぇ」
「「………………」」

自分の無力さを知る。

「コイツを守るために、この世界入ったってのにな」

後悔なんざなんの役にも立たねぇんだろうけど、そう言わざる負えなかった。

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作品ジャンル:恋愛
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時

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