91-4 ページ42
.
彼の目に嘘はない。
本当に気づいていたんだろう。
だとすれば、さぞ滑稽に見えたんじゃないだろうか。
(カッコ悪…)
視線を外してそんなことを考えていたら、突然額にデコピンを喰らった。
「いてっ!」
「そうやってすぐ隠そうとするな」
額を押さえながら顔を上げる。
「思ってることあんなら言え。…お前のことは何でも知りてぇんだよ」
意外な言葉に、俺はポカンと口を開けた。
その意味を探す前に、智司はゆっくりと俺の頭を撫でる。
「……。君はすぐ俺の頭を撫でるな」
「収まりのいい頭の形してるお前が悪い」
つい触りたくなんだよ、と言って笑う彼を見ていると、厄介な感情が溢れそうになって顔を背けた。
「………………」
彼らは、すぐ俺の予想を軽々と超えてくる。
馬鹿みたいに悩んで考えていたことが全部無駄になった。
(身構え損だよ)
くだらない事だと笑ってくれたらいいけど。
「…ねぇ」
「?」
「抱きしめてもいいかな」
触れることを望むと、彼は黙って腕を開いた。
ゆっくりと、その広い背中に腕を回す。
「―――――…」
ほのかに香る酒の匂い。
少しだけ煙草の匂いもする。
きっと宴会ホテルで他の組員にうつされたんだろう。
(それでもどこか安心するのは)
彼自身の香りが強いからかな。
「…ホントはずっと別れの練習をしてた」
「別れ?なんでだ」
「本音を言ったら、傍を離れてくと思ったから」
「随分安くみられたもんだな」
ため息交じりに降ってきた嫌味。
「そんな簡単に離れるわけねーだろ。どんだけお前のこと好きだと思ってんだ」
「………………」
「…で、相良にはなんて言ったんだ?」
「一人に決められない俺と関係を断ち切って、自分だけを愛してくれる人を見つけたって怒ったりしないって」
「酷だな」
ズバッと言うなよ。
「でも本当は、君たちをどこへもやりたくない」
「………………」
「他の子と幸せになってる姿なんて見たくないし、俺の方がずっと幸せにできるって思ってる」
ちょっと傲慢だろうか。
でも、嘘じゃない。本気だ。
68人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時