検索窓
今日:7 hit、昨日:22 hit、合計:9,535 hit

90-6 ページ38

.


「マジで嫌われてると思った…」



相良が、そうぽつりと呟いた。
目を見開く。

「勘違いさせんなよ…ばか」

力が強くなる。
身体を伝って、心臓の音が聞こえた。

「じゃあ、あの言葉は嘘じゃねーのな?」
「え……」

顔を上げる。
あの言葉って…。

「八島華に言った言葉?」
「あぁ」
「…まぁ……そうだね」
「ふーん」

隠すように少しだけ吊り上がった口元。

「俺の事、好きなんだな?」
「………………」
「A」
「…さっき言っただろ…」
「もう一回」
「………………」
「言えって」

捕えられた手を口元に近づけて、骨をなぞるように唇が滑る。
挑戦的な笑み。
ドキドキするのを、分かってやってるんだ。


「………すき」


そう言えば、嬉しそうに笑う相良。
こんな表情一つで、許せてしまう俺もどうかしてる。


(ーーーーじゃなくて)


これ伝わってなくないか?
良い方にだけ解釈されてる気がする。

ハッキリさせるために、俺は相良の拘束を無理やり解いた。

「俺の言ってること本当に理解してる?」
「…あ?…俺も智司も好きってこったろ」
「え…あ、そう。そうなんだけど…」

なんでこんなに落ち着いてるんだ、この男。

(結局どうしたらいいんだコレ)

困惑しながら首をかしげる俺に、相良は構わず引き寄せる。

「決めらんねーんじゃ仕方ねぇだろ。…だが、俺はオメーの男だって証明されたわけだ」
「智司も同じだぞ…?」
「アイツの答えは知らねーよ。家帰ってから訊くんだろ?…これで断ってくれりゃ、晴れて俺一人の女になるから万々歳だけどな」

それだけ言って、俺を腕の中に閉じ込める。
機嫌が良さそうに鼻歌歌いながら、俺の髪をいじりはじめた。

(置いて行かれてるのは…俺だけ?)

とりあえず、彼と仲直りができてよかったと思うべきか。
楽観的な考えをなじるべきか。

「君は…ホントに読めない人間だな」
「オメーに言われたかねぇよ」

伸ばした腕が、テーブルの上に置かれたおにぎりを掴む。
何かと思えば、俺の口元に近づけてきた。

「ん」
「…食えと?」

じっと俺を見つめたまま、おにぎりの手は動かない。

「オメー、酒持ったまま喋ってばっかで少しも食ってねぇだろ」

目を見開く。
ずっと見られてたのか。

はぐっ…もぐもぐ

「うまいか?」
「うまいよ」

単純かもしれないけど
彼の緩む頬を見ていたら、それでもいいかと思えてしまった。

これは決して惚気ではない。
……惚気ではないよ。





――――――

91-1→←90-5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
68人がお気に入り
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。