カメレオン11【今日から俺は】

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「まって、くれ。ちょっと…」
「むり」

何度も何度もキスをされる。
うまく呼吸を繋げなくて、乱れていく息を恥ずかしがる気力もない。

「はぁ…っ…ふ…」

散々やられてようやく止まった。
包み込むみたいに俺を抱きしめる相良は、乱れた息をそのまま首筋に押し付ける。

「はぁ…さが…ら……」
「…なに…」
「っ、さいごまで聞いてくれって…」
「…きく」

くぐもった声だけど、耳が近い所為か何を言ってるか理解できる。
この体制から解放する気はないんだろう。
取り込んだ酸素で、少しだけ息を整える。

「…さがら」

だいぶ呼吸に余裕ができてきた。

「俺……君も好きだけど…智司も好きなんだ」
「………………」
「どっちが一番とか…決められなかった…」
「………………」
「それで答えに困って…逃げ出した」

相良は黙って聞いてくれている。

「これから先も…決めることはできないと思う…」

相良も呼吸が落ち着いたのか、首元に感じる息の熱さが少し薄れた。

「俺はね、君たち二人の事が好きだから…愛しいから…ずっと大事に想える」
「………………」
「君たちの幸せを願える」

今日は一つも嘘をつかないと決めた。
思ってることは全部伝えると決めたから。

「だからさ…ねぇ、相良」

とんとんと背中を叩いて顔をあげさせる。
彼の目が真っ直ぐ俺を見た。
そんな小さなことが、とても嬉しい。

「一人に決められない俺と関係を断ち切って、自分だけを愛してくれる人を見つけたって怒ったりしない」
「………………」
「関わることがなくなっても大事なのは変わらないし、相良に困ったことがあれば、全力でA組の力を使ってでも助けに行く」

彼の頬に手を添えた。
愛しいと思うこの気持ちが、指を伝って彼に届きますように。

「君が選んで欲しい。…どんな答えも受け止めるから」

この数日間一人で悩んで
悩んで悩んで出した言葉。
もう覚悟はできてる。



相良がじっと俺を見つめる。

その後、ゆっくり目をつむった。

顔を俯ける。








「ハァ…」








深いため息。
予想外のそれに、俺はどう反応していいか分からず目を丸くした。

(ため息…？)

なんでため息。
俺…変なこと言った…？

選んだ言葉がおかしかったのか。
文脈が下手で伝わらなかったのか。
そんな疑問がぐるぐる頭の中をまわっていると、突然相良が俺をまた抱きしめた。

今度は俺が首筋に埋もれる番。
荒く撫でられた頭。
くしゃりと髪が乱れる。

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