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「でも、アイツは俺の事…好きじゃなかった」
いつまでも目を離さない相良の視線の先には、彼女がいる。
「本人がそう言ったのか?」
「いや言ってねぇ。けど、態度でわかる」
なんとも反応しづれぇその言葉に、俺は気まずくなって頬を掻く。
相良が座りながら後ろに倒れた。
「あ゛ぁ―――…マジ行きたくねぇ」
ぜってーフラれるじゃねーか。
メンタルもたねぇ。
そうぼやきながら、目元を両腕で覆う。
「ばーか。ちゃんと本人の口から言われて初めて嘆けよ」
「…オメーはいいよな。好かれてて」
「Aが言ったんじゃねぇだろ」
「言ってねぇ」
「じゃあ軽々しく言うな」
立てた膝をバシッと叩くと、相良は「いてぇ!」と文句をたれた。
「酒、あんま飲むなよ。ちゃんと話聞いてやれ」
「…わかってる…」
宣戦布告を受けたわけじゃねぇが、似たような心持で酒を飲まなきゃいけねぇってのは味気ない。
俺も覚悟するか。
(アイツがどんな答えを出したとしても、受け止めるって決めたからな)
* * *
程よく組員たちが酔い始めた。
宴会モードが始まって一時間。
ちらりと相良の方を見ると、進まないビールを片手に、酔っ払いテツの相手をしている。
「…面倒臭そうな人に捕まってる…」
「え?なんですか、お嬢」
「いや、こっちの話」
そろそろ声をかけようかな。
そう思って若衆と別れると、女将さんに無理を言って別室を用意してもらった。
「相良」
「…おう」
「お嬢ー!へへへ、のんでやすか?のんでやせんね〜!」
「テツ、飲みすぎ。またアルに庭に捨てられちゃうよ」
「う…それはいやれす…。俺ァもう雪にうもれたくないれす!!」
(雪中にやられた事あるのか)
容赦ないな、アル。
「相良を借りても良いか?」
「うぅ…俺からかわいいかわいい猛をうばうんれすか…?」
「おっさんがそんな可愛い声出すなよ」
厳つい顔を真っ赤にして言われている所為か…より気持ち悪い。
「明日は大阪行きだから、ほどほどにしろよ」
「わかりやしたよ…お嬢のたのみだから…きくんですからね?」
「はいはい」
背中をさすって立ち上がらせると、幹部席に座らせる。
様子を見ていた部下たちが介抱を引き受けてくれた。
やれやれと息をついて相良の元へ戻ろうとすると、いつの間にか立ち上がって傍まで来ていた。
「わっ…」
「なにビビってんだよ」
「いや、別にビビってるわけじゃ…」
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時