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見てたらわかる…か。
誰から見てもそうなんだろうか。

(二人も気づいてたりして)

智司は相良と違って、あれから何も言わないけど。

「………んー…」
「?」

みんなのスケジュールを管理している俺が、わざと付き人業を減らしたこの数日間。
きっと彼らも気づいてる。

「…京子ちゃんはすごいね」
「え?」

俺はカフスから一つボタンを外した。

「いつも全力で伊藤の事が好きで、彼に対して一生懸命で、真っ直ぐで羨ましい」
「………………」
「尊敬する」

相良がくれたカフス。
彼の持つ指輪と同じデザインにダイヤが光る。

「俺はさ、傷つくのが怖いから、逃げる傾向があるんだよね。最近そういうのよく気づいて情けなくなる」
「逃げちゃダメなんですか?」
「ダメなわけじゃないだろうけど…。俺の世界一嫌いな人たちとまったく同じことしてるんだ」

外灯の光で、違う顔を見せるそのカフスを見下ろす。

「だから逃げたくはないんだけど、やっぱり怖くてさ。どうしていいかわからなくなってる」
「………………」
「ダサいっしょ?」

フッと笑いかけると、彼女は首をブンブン横に振った。

「ダサくないッスよ。あたしだって前に、伊藤さんが理子さんと浮気してるんじゃないかって考えちゃったときがあって、怖くて伊藤さんに言えなかったんスよ!」
「浮気?」
「あ、いやいや!結局あたしが勘違いしてただけなんスけど…。その時は、伊藤さんじゃなくて理子さんに向かっちゃったんスよね。あはは、今考えればホント迷惑な話なんですけど」

伊藤さんに詰め寄る勇気がなくて…なんて京子ちゃんは恥ずかしそうに頬を掻いた。

「みんなきっと一度は経験してますよ。怖くない奴なんていないッス」
「………………」
「だから大丈夫!Aさんも怖くなって良いんですよ!」

バシバシ、と両肩を叩かれた。



「頑張ってください、Aさん。いつか勇気がでるその日まで、あたし応援しますから!」



ね、って笑う京子ちゃん。
伊藤がデレデレする意味がわかる。
彼女は本当に可愛らしい。



「ありがとう」



だから、俺もお返しに笑ってみせた。
心の陰りが晴れた、12月の夜。






――――――

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作品ジャンル:恋愛
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時

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