88-3 ページ26
.
慌てて駆け寄る二人。
しばらくして、女の子は小児科担当の看護婦さんに連れていかれた。
残された男の子たちは心配そうに見つめていたが、やがて二人だけで遊び始める。
(女の子の事なんて、無かったみたいに)
そんな彼らの笑顔が、あの二人に重なって見えた。
「―――――…」
彼らもそうなんだろうか。
俺と出会わなくても
二人だけで力を合わせてやっていけたんだろうか。
俺が居なくても
あんな風に笑って生きていたんだろうか。
「………………」
二人が呆れて離れていくのを、頭のどこかで予想してる。
(意気地なし)
鼻の奥がツンとしたような気がして、子供たちから視線を逸らした。
「…やっぱりA組は呪われてるよ」
「俺の所為じゃあねェぞ?」
「だとしたら、ご先祖様の所為かな」
今度大阪に行った時に文句の一つでも言ってやろう…なんて、口元を無理やり吊り上げた。
叔父さんは黙ってそれを見てる。
手元にあるメリケンを擦った。
悩むと擦る癖…治したいな。
「A」
困らせてしまった叔父さんが、俺の名前を呼ぶ。
作り笑いで「なに?」と振り返る自分を、殴ってやりたくなった。
「逃げるか?」
目を見開いた。
叔父さんは、真っ直ぐな目で俺を見つめる。
「逃げてもいいぞ。…だがな、逃げるのはおめぇさんが一番嫌ってた親と同じやり方だぜ」
想い人に嫌われるのが怖くて、向き合うことから逃げた父。
血が繋がっていようと、嫌いな男から生まれた娘を愛することから逃げた母。
「よく考えろ。俺ァおめぇさんを導けねぇ。…一度失敗した男だからな」
叔父さんの言葉が胸を刺した。
俺は何も言い返せず、ただ手の中にあるメリケンを強く握ることしかできなかった。
――――――
68人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時